本研究課題では、細胞周期依存的なNICDの分解の分子機構を明らかにし、その分解の神経分化への関与を検証することを研究目的としていた。平成24年度ではCdk3のNICDへの結合とリン酸化の解析[計画②-(1)]を行った。NICD変異体を用いた解析により、Cdk3がN末端領域にある複数の領域に結合すること、さらにNICDの分解がCdk3による複数ヶ所のリン酸化に依存することを示唆するデータを得た。またNICDの分解に関与するユビキチンリガーゼの同定についても研究を行い[計画②-(2)]、SCF-Skp2が細胞周期依存的なNICDの分解に関与していることを見出した。平成25年度は、NICD分解の神経分化への影響を、アフリカツメガエル胚を用いて解析をした[計画②-(3)]。アンチセンスDNAを用いたSkp2阻害実験を行い、神経分化への影響を観察したところ、NICDの過剰発現と同様に顕著にツメガエル神経分化が抑制された。このことはSkp2によるNICDの分解が神経分化の促進に関与している可能性を示唆する。さらに研究代表者は質量分析による解析から、Skp2に結合するこれまで報告されていないFboxタンパクを見出した。興味深いことに、このFboxタンパクは細胞周期の間期では安定であり、分裂期(M期)特異的に分解されていた。このFboxタンパクを培養細胞に過剰に発現すると細胞周期依存的なNICDの分解が顕著に抑制された。このことは、NICDがM期から第一間期(G1期)にかけて分解されるのは、Skp2によるNICDの分解を抑制するFboxタンパクの分解のために起きていることを示唆する。現在、このFboxタンパクのNICD分解における影響についてさらなる解析を進めると共に、上記の研究成果に関する学術論文の投稿を準備している。
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