研究課題/領域番号 |
24657141
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
多賀谷 光男 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (30179569)
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研究分担者 |
谷 佳津子 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40266896)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 小胞体 / サブコンパートメント / 脂肪滴 / ペルオキシソーム / Sec16B / syntaxin 17 |
研究概要 |
予備的な研究成果から、申請者らは、1)ペルオキシソーム膜のde novo合成と脂肪滴の合成は、小胞体のミトコンドリア接触領域(MAM)で起こり、互いに関連している。2)これらの過程に、syntaxin17(Syn17:MAMに存在するSNARE)やFis1(ミトコンドリアおよびペルオキシソームの分裂因子)が関与し、またこれらのタンパク質の局在をSec16Bが調節している、という仮説を立てた。この仮説を検証する第一歩として、本年度は以下の実験を行った。 1.Sec16Bに依存したタンパク質のMAMへの局在化:その一部がMAMに存在するといわれているカルネキシンやIP3受容体について、Sec16Bの発現抑制による局在変化を調べた。カルネキシンについては、ごく一部の細胞で変化が見られたが、このタンパク質は小胞体のホメオスタシス変化によっても局在が変化するので、更なる解析が必要である。 2.MAMの構築:Syn17のMAMへの局在化機構について調べた。その結果、Syn17のC末端の疎水領域(CHD)を二分するLys-254、およびCHDに続くC末端塩基性アミノ酸クラスター(+C)が重要であることが判明した。Syn17の発現を抑制すると、ミトコンドリアの形態が変化し、脂肪滴形成が抑制された。これらの変化は、Sec22b(Syn17と結合するSNARE)およびSyn18(小胞体に存在するsyntaxin)の発現抑制では起こらなかったので、SNARE活性(膜融合活性)とは異なるSyn17の機能の可能性が考えられる。ミトコンドリアの形態変化は、CHD+Cでレスキューされたが、脂肪滴の消失は全長Syn17でのみ抑制された。 3.Rab32(GTPase)との関連: Rab32はカルネキシンのMAM局在を調節していることが報告されている。現在、Rab32とSyn17の結合を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミトコンドリアの形態および脂肪滴の形成におけるSyn17の関与を証明できた点は大きな前進であるが、一方、ペルオキシソーム膜のde novo合成への関与についてはまだ解析が進んでいない。また、Sec16B、Fis1、Rab32に関しては解析がやや遅れている。大きな前進と遅れている部分を総合的に判断すれば、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.Rab32との関連:Rab32の発現抑制、活性型および不活性型変異体の発現を行い以下の点を調べる。1)Syn17およびFis1を含むMAMタンパク質の局在の変化、2)Sec16Bの局在の変化、3)脂肪滴形成への影響、4)ペルオキシソーム形成への影響(小胞体からペルオキシソームへ輸送されるPex16およびPex3の輸送への影響)を調べる。 2.脂肪滴形成に関与する因子の同定:Sec16Bの発現抑制によって脂肪滴形成が誘導されることから、MAMは脂肪滴形成の場ではあるが、一方、その形成を抑制していると考えられる(Sec16Bの発現抑制によってMAM構造が壊れると、その抑制が外れて脂肪滴の形成が促進される)。この誘導に関連する因子(脂肪滴形成の直接的な因子)を同定するために、Sec16Bとのダブルノックダウンを行う。当面のターゲットとしては、Sec16Bの発現抑制によって局在変化するタンパク質であるが、以下の研究の進行によって可能性の生じたタンパク質もターゲットとする。 3.MAMの構築:Syn17およびSec16B結合タンパク質を同定し、ペルオキシソームおよび脂肪滴合成と両者の連関における役割を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度と同様に、細胞培養、遺伝子組換え、抗体作製などのための消耗品費(物品費)として使用する。
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