研究課題
腺維芽細胞と上皮細胞の比較から、脂質セカンドメッセンジャーであるジアシルグリセロールの形質膜での膜を横切る運動(フリップフロップ)はスフィンゴミエリンによって制御されていることが明らかになった。この結果は形質膜外層にジアシルグリセロールのプールが存在すること、スフィンゴミエリンの分解に伴い脂質ラフトの裏側へのジアシルグリセロールの移行が起こり、ラフトでの情報伝達に関与していることを示唆している。SDS-フリーズフラクチャーレプリカ法(SDS-FRL)は脂質二重層の外層と内層の脂質分布を解析できる数少ない方法の一つである。この方法では試料を液体窒素や液体エタンで急速凍結した後、脂質二重層を疎水性部分で割断する。試料は脂質の炭化水素部分を介してグリッドのプラチナ・カーボンに物理的に固定される。SDSによって非特異的にグリッドに吸着した残渣を除くことにより脂質二重層の内層、あるいは外層を露出した試料の調製が可能である。われわれはSDS-FRLと種々の脂質特異的タンパク質あるいはペプチドを併用して形質膜の内層と外層での脂質分布を詳細に解析した。その結果、核を持たない赤血球や血小板ではスフィンゴミエリン、ホスファチジルコリンは形質膜の外層のみに存在し、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン/ホスファチジルイノシトールは内層に局在するのに対して、腺維芽細胞や好中球では形質膜内層にもスフィンゴミエリンのドメインが存在することが明らかになった。また脂質ラフトのひとつであるカベオレの外層にはスフィンゴミエリンのクラスターが存在し、内層のカベオレ周辺部にはホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸が存在するが、ホスファチジルセリン/ホスファチジルイノシトールは存在しないことが示唆された。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
Biochim Biophys Acta
巻: 1841 ページ: 720-726
10.1016/j.bbalip.2013.07.003
J Lipid Res
巻: 54 ページ: 2933-2943
10.1016/j.bpj.2013.07.052
FASEB J
巻: 27 ページ: 3284-3297
10.1096/fj.12-226548
http://www.riken.jp/research/labs/chief/lipid_biol/
http://www.riken.jp/lbl/mainpagelbl.html