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2012 年度 実施状況報告書

爬虫類ミトコンドリアにおける遺伝子発現様式の多様性と進化

研究課題

研究課題/領域番号 24657163
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

熊澤 慶伯  名古屋市立大学, システム自然科学研究科, 教授 (60221941)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード次世代シーケンサー / トランスクリプトーム / ミトコンドリアDNA / 爬虫類 / RNA編集 / polyA / 翻訳異常 / 遺伝子配置変動
研究概要

本研究の目的は、爬虫類を題材として、ミトコンドリアゲノム(mtDNA)における遺伝子発現様式の多様性と進化を、従来にない新しいアプローチで探究することである。
爬虫綱有鱗目の主要系統を代表する5種からmtDNA の全塩基配列を決定した。一方、同一個体からmRNAを調製し、Roche GS FLX Titanium型次世代シーケンサーまたはIllumina HiSeq型次世代シーケンサーを用いて、トランスクリプトーム解析を行った。得られた断片readのうち、mtDNAに由来するものをBlast解析で選別し、その塩基配列をmtDNA全塩基配列と照合した。その結果、5種の有鱗類ミトコンドリアにおいて、mtDNAコードの13タンパク質遺伝子と2 rRNA遺伝子にはRNA編集や翻訳フレームシフトが見いだされなかった。
3’末端にpolyAを含むreadをmtDNA全塩基配列上にマップしたところ、先行研究でヒトなどの哺乳類で報告されているpolyA付加サイトと概ね調和する結果が得られた。しかし、例えばND5遺伝子mRNAのpolyA付加サイトがND5遺伝子の直下に存在するかどうかについて、種ごとに異なる結果が得られた。現在このような違いが得られた原因に付いてさらに解析を進めている。
polyA付加によって終止コドンが出現するmRNAについて、polyA含有readの3’末端構造を調べたところ、正しく終止コドンが出現しないような配列異常が高頻度で生じていることが示された。現在、この結果が次世代シーケンス解析に伴う何らかのエラーである可能性を含めて詳しく検証を進めているところである。
このように研究目的をハイスループットに実現するための新しい手法の開発は着実に進んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、爬虫類を題材として、ミトコンドリアゲノム(mtDNA)における遺伝子発現様式の多様性と進化を、従来にない新しいアプローチで探究することである。従来の手法を適用するのではなく、全く新しい手法を開発して行う研究である。
任意の脊椎動物からRNA編集や翻訳フレームシフトのサイトを網羅的に探索する手法はこれまで存在していない。今までのところRNA編集や翻訳フレームシフトのサイトは新規に発見されていないものの、それを短期間で探索できる手法を開発できたのは、本研究の大きな成果の一つである。
本研究はまだ研究途上であり結論は確定していないものの、mRNAへのpolyA付加の位置やpolyA付加の正確性について新しい結果が次々に得られている。これらの成果は、やはり次世代シーケンサーを用いたハイスループットな手法なしでは容易に得られなかったものである。
本研究は、脊椎動物mtDNAの遺伝子発現様式とその進化について、新しい手法で解明するモデル研究として、意義深いと評価できる。

今後の研究の推進方策

所属研究科に新しく導入されたイルミナ社MiSeq型次世代シーケンサー(250bpのペアエンド解析が可能)を本研究に積極的に活用していきたい。これまでの予察的な研究によって、エラー率の比較的低いSequence-by-Synthesis型を採用したイルミナ社のマシンが本研究の目的に現状で最も適合していると判断される。新しい種を1-2種選定し、昨年度と同様のトランスクリプトーム解析を行い、そのデータを利用してRNA編集等の探索、polyA付加の位置や正確性の検証を行うつもりである。
またイルミナ社のマシンによる解析で比較的高いpolyA付加エラー率が示されたミトコンドリア遺伝子に関して、3' RACE解析を実施することで、より詳しく裏付けるデータを取得したい。数種のデータを比較することで、polyA付加エラー率に影響を与える要因を洞察する研究を行うつもりである。
一方、13コのタンパク質遺伝子に関する定常状態におけるmRNA量比を、read数の比較によって推定する解析を行いたい。その結果をさらに定量PCRによって裏付ける実験も行う必要があろう。それらの結果を踏まえて、定常状態におけるmRNA量比がどのような要因によって決定されているのか、遺伝子の配置変動(制御領域の重複も含む)がmRNA量比にどのような影響を及ぼすのかについて考察を行いたい。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費の使用費目としては、50万円を超える備品類や謝金への支出は予定していない。トカゲ・ヘビ類など実験動物の購入費用と、次世代シーケンス関連の試薬・キット類など実験用消耗品の購入に約150万円、研究代表者や研究協力者の旅費として日本進化学会などへの参加・発表経費に約30万円、民間企業へのインフォマティクス解析の委託等に約30万円を予定している。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 脊椎動物嗅覚受容体遺伝子ファミリーの進化研究における次世代シーケンサーの活用2013

    • 著者名/発表者名
      橋口康之、熊澤慶伯
    • 雑誌名

      生物科学

      巻: 64 ページ: 131-140

    • URL

      http://www.ruralnet.or.jp/seibutsu/064_03.htm

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of squamate olfactory receptor genes and their transcript by the high-throughput sequencing approach2012

    • 著者名/発表者名
      Dehara, Y., Hashiguchi, Y., Matsubara, K., Yanai, T., Kubo, M., and Kumazawa, Y.
    • 雑誌名

      Genome Biology and Evolution

      巻: 4 ページ: 602-616

    • DOI

      10.1093/gbe/evs041

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mitochondrial genomes of two African geckos of genus Hemitheconyx (Squamata : Eublephari- dae)2012

    • 著者名/発表者名
      Jonniaux, P., Hashiguchi, Y., and Kumazawa, Y.
    • 雑誌名

      Mitochondrial DNA

      巻: 23 ページ: 278-279

    • DOI

      10.3109/19401736.2012.668898

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intra-genomic GC heterogeneity in sauropsids: evolutionary insights from cDNA mapping and GC3 profiling in snake2012

    • 著者名/発表者名
      Matsubara, K., Kuraku, S., Tarui, H., Nishimura, O., Nishida, C., Agata, K., Kumazawa, Y., and Matsuda, Y.
    • 雑誌名

      BMC Genomics

      巻: 13 ページ: 604

    • DOI

      10.1186/1471-2164-13-604

    • 査読あり
  • [学会発表] ヤモリ類のミトコンドリアゲノミクス:遺伝子配置変動と系統関係2012

    • 著者名/発表者名
      熊澤慶伯、三浦沙綾、孫ぎょう、ピエールジョニオ、山田知江美、橋口康之
    • 学会等名
      日本分子生物学会第35回大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場&マリンメッセ(博多)
    • 年月日
      20121212-20121212
  • [学会発表] 尾張地区におけるカスミサンショウウオの遺伝的解析2012

    • 著者名/発表者名
      藤谷武史、能登原盛弘、熊澤慶伯
    • 学会等名
      日本爬虫両棲類学会第51回大会
    • 発表場所
      愛知学泉大学(豊田市)
    • 年月日
      20121110-20121110
  • [学会発表] カメ類ミトコンドリアゲノムにおける翻訳フレームシフトの分子進化2012

    • 著者名/発表者名
      山田知江美、柴田弘紀、熊澤慶伯
    • 学会等名
      日本進化学会第14回大会
    • 発表場所
      首都大学東京(八王子市)
    • 年月日
      20120823-20120823
  • [学会発表] Characteristics of mitogenomic data for vertebrate phylogenetics2012

    • 著者名/発表者名
      Kumazawa, Y. Kurisaki, M. and Sun, Y.
    • 学会等名
      The Plenary International Symposium "Phylogenetics", Society of Evolutionary Studies, Japan
    • 発表場所
      Tokyo Metropolitan University, Hachioji City
    • 年月日
      20120822-20120822
    • 招待講演
  • [学会発表] 爬虫類ミトコンドリアにおける転写物の網羅的解析2012

    • 著者名/発表者名
      孫ぎょう、栗崎正希、熊澤慶伯
    • 学会等名
      日本進化学会第14回大会
    • 発表場所
      首都大学東京(八王子市)
    • 年月日
      20120822-20120822
  • [学会発表] トランスクリプトームを用いたヘビ類の系統的位置付けの解析2012

    • 著者名/発表者名
      栗崎政希、松原和純、熊澤慶伯
    • 学会等名
      日本進化学会第14回大会
    • 発表場所
      首都大学東京(八王子市)
    • 年月日
      20120821-20120821
  • [学会発表] 並列DNAシーケンサーを用いた有鱗類嗅覚受容体遺伝子群の網羅的解析2012

    • 著者名/発表者名
      橋口康之、出原由季、松原和純、柳井徳磨、久保正仁、熊澤慶伯
    • 学会等名
      日本進化学会第14回大会
    • 発表場所
      首都大学東京(八王子市)
    • 年月日
      20120821-20120821

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公開日: 2014-07-24  

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