真核生物は、古細菌を宿主として真正細菌が細胞内共生して誕生したと理解されている。しかし、宿主となった古細菌の種類、αプロテオバクテリア以外の細菌の寄与など、多くの未解決の問題がある。真核生物の様々な特徴は、細菌か古細菌に由来を見つけることが可能なはずであるが、未だに真核生物の様々な特徴の起源が不明である。 真核生物の食作用の起源が、古細菌における細胞骨格関連タンパク質にあるのではないかという、分子系統解析結果があるが、これまで原核生物における食作用は見いだされていない。我々は古細菌Thermoplasma acidophilumの電子顕微鏡連続切片観察、共焦点顕微鏡観察、電子顕微鏡抗体染色観察を行う事から、T.acidophilumが食作用を持つかどうか、関与するタンパク質に関して明らかにする事を目的とする。 1)電子顕微鏡連続超薄切片観察:古細菌Thermoplasma acidophilumを培養、集菌、固定し、超薄切片の作製(Yasuda et al. 1995)を行い、連続切片として電子顕微鏡観察を行った。連続切片画像を無料のソフトウェアReconstructを用いて3D画像とした。小型の細胞が他の細胞に取り込まれる過程の構造が観察された。 2)共焦点蛍光顕微鏡を用いた観察:共焦点顕微鏡を用いて、食作用の観察をおこなった。T. acidophilumの培養細胞を被捕食粒子(リポソームに取り込ませたナノドット蛍光粒子:赤色に発色)と混合後、56℃(T. acidophilumの至適生育温度)で数日保温した後に、DNAを緑色蛍光色素で染色し、共焦点顕微鏡で観察した。補色粒子の赤色蛍光が緑色の細胞に包まれている様子が観察された。
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