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2013 年度 実施状況報告書

単細胞生物から多細胞生物への進化における鍵因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 24657167
研究機関基礎生物学研究所

研究代表者

長谷部 光泰  基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 教授 (40237996)

研究分担者 西山 智明  金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (50390688)
石川 雅樹  基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (00586894)
キーワード多細胞進化 / オーキシン / ヒメツリガネゴケ / 側方抑制
研究概要

(1) (a) オーキシン排出担体PGPにRFPをノックインした形質転換体を用いて、幹細胞化におけるPGP-RFPの時空間的発現を調べた。その結果、切断後8時間目以降で、葉内部の細胞で葉の先端部方向にある細胞膜でその発現が観察された。また同時期に、葉内部の細胞でオーキシン応答性遺伝子GH3プロモーターの活性化が観察されたことから、切断後、オーキシンは葉の切断面から先端部へ向かって輸送されると予想された。(b) オーキシン合成を制御するSHIとYUCCA、オーキシン不活性化を制御するGH3遺伝子について、それぞれGFPノックイン株、遺伝子欠失株を作製した。現在それらの解析を行っている。(c) オーキシンが幹細胞化抑制シグナルとして機能するのであれば、オーキシンシグナルを抑制することで、葉の内部の細胞での幹細胞化を促進するのではないかと考え、オーキシン拮抗阻害剤auxinoleの影響について調べた。切断後12時間目にauxinoleで処理すると、切断面だけでなく葉内部での幹細胞化が観察された。ところが、切断直後にauxinoleで処理すると、切断面に面する葉細胞の幹細胞化が抑制された。これらのことから、幹細胞化の初期の過程ではオーキシンは幹細胞化促進に必須であるが、ある時点から抑制的に機能することが示唆された。
(2) トランスクリプトーム解析:オーキシンセンサーであるDIIドメインとGFP との融合タンパク質(DII-GFP)を用いてトランスクリプトーム解析を行う予定であったが、DII-GFPを一定に発現させるプロモーターが無く、細胞間での蛍光シグナル強度に違いがでるため、新たにオーキシンセンサーラインの検討を行う必要が生じた。
(3) 幹細胞化抑制因子としてのペプチド探索:幹細胞化抑制因子として機能することが示唆されたので、幹細胞化におけるオーキシンの機能の解明に集中した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

幹細胞化におけるオーキシン分布変化、オーキシン輸送体PGPの時空間的発現解析、およびオーキシン拮抗阻害剤auxinoleによる表現型解析から、オーキシンが側方抑制因子として機能する可能性が示唆された。一方、オーキシンセンサーであるDII-GFPが細胞間での蛍光強度に違いがでるため、新たなオーキシンセンサーについて検討する必要が生じた。そこで、Freiburg大学Klaus Palme教授と共同研究を行い、新たなオーキシンセンサーの開発を進めている。この新しいセンサーラインを確立することで、2細胞および切断葉でのオーキシン濃度勾配形成を高解像度に解析できることが期待でき、次年度のトランスクリプトーム解析、およびペプチド探索を進めることができると考えている。

今後の研究の推進方策

オーキシンが側方抑制因子の実体かを調べる実験を行う。実験は大学院生Liechi Zhang(研究協力者)と石川が行い、オーキシン分布変化のモデル化はZhangと西山が行う。また長谷部と石川が研究を総括する。
(1) 新たなオーキシンセンサーの開発を継続する。具体的には、DIIドメインとルシフェラーゼ遺伝子を融合し(DII-LucI)、さらにキャリブレーション用として、DII-LucI遺伝子にmRNA自己切断配列2Aを介して異なる発光波長のルシフェラーゼ遺伝子(LucII)を融合させる。このコンストラクトを導入した形質転換体を作出し、2細胞および切断葉でのオーキシン濃度勾配を定量的に解析することで、オーキシンセンサーラインとしての評価を行う。
(2) 前年度に作製したオーキシン関連遺伝子のGFPノックインラインの時空間的発現解析、および、それら遺伝子の欠失株の表現型解析を行う。特にPGPがオーキシン分布変化に関与する可能性が示唆されたので、(1)で作製した形質転換体のPGP遺伝子を欠失したラインを作製し、オーキシン分布変化とその表現型について調べる。
(3) (1)で作製したオーキシンセンサーラインを用いて、葉から2細胞あるいは3細胞を単離し培養する。培養後24時間目と36時間目で、幹細胞化する細胞としない細胞から細胞抽出液をそれぞれ回収し、超並列シークエンサーを用いてトランスクリプトーム解析を行う。
(4) 上記の解析結果に基づき、幹細胞化におけるオーキシン分布変化をシュミレーションしてモデル化し、オーキシンが幹細胞化抑制因子として機能するのかを検討する。以上の結果をまとめ、論文として公表する。
(5) オーキシン以外の幹細胞化抑制因子の可能性もあるので、幹細胞化する細胞としない細胞間での細胞内に含まれるペプチドを質量分析計によって比較解析行い、候補となるペプチドを探索する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額の1,582,692円については、トランスクリプトーム解析・ペプチド探索のための物品費、研究成果を国内外に発表するための学会発表の旅費および論文投稿料として支出する予定であった。しかし、オーキシンセンサーラインとして使用していたDII-GFPが、上述のようにヒメツリガネゴケの細胞でうまく機能しなかったため、当初予定していたものとは異なるオーキシンセンサーラインを検討する必要が生じた。そのため、平成25年度に新たなオーキシンセンサーの試行錯誤を行い、次年度にトランスクリプトーム解析・ペプチド探索を行う必要になり当該研究費が生じた。
前年度の新しいオーキシンセンサーの研究成果に基づいて、2細胞でのトランスクリプトーム解析・ペプチド探索を進める。また、研究成果を国内外に発表するため論文発表を行う。そこで、以下のように物品費、論文投稿料に研究費(計1,582,692円)をあてる。
物品費:トランスクリプトーム解析のための超並列シークエンサー用試薬に800,000円、幹細胞化抑制機能をもったペプチドの探索のための分子生物学的試薬に482,692円を計上する。その他(論文投稿料):研究成果を取りまとめて、論文を投稿するための経費300,000円を計上する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] WOX13-like genes are required for reprogramming of leaf and protoplast cells into stem cells in the moss Physcomitrella patens.2014

    • 著者名/発表者名
      Sakakibara K, Reisewitz P, Aoyama T, Friedrich T, Ando S, Sato Y, Tamada Y, Nishiyama T, Hiwatashi Y, Kurata T, Ishikawa M, Deguchi H, Rensing SA, Werr W, Murata T, Hasebe M, Laux T.
    • 雑誌名

      Development

      巻: 141 ページ: 1660-1670

    • DOI

      10.1242/dev.097444

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Eight types of stem cells in the life cycle of the moss Physcomitrella patens2014

    • 著者名/発表者名
      R. Kofuji and M. Hasebe
    • 雑誌名

      Current Opinion in Plant Biology

      巻: 17 ページ: 13-21

    • DOI

      10.1016/j.pbi.2013.10.007

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒメツリガネゴケの細胞リプログラミングを誘導する分子機構2013

    • 著者名/発表者名
      石川雅樹、長谷部光泰
    • 学会等名
      日本植物学会 第77回大会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道)
    • 年月日
      20130913-20130915
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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