研究課題/領域番号 |
24657168
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
今西 規 東海大学, 医学部, 教授 (80270461)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超微小逆位 / 比較ゲノム / 分子進化 |
研究概要 |
本研究では、バクテリアからヒトまでの広範な生物種のゲノム配列データの計算機解析により超微小逆位を同定し、超微小逆位が普遍的な進化現象であるという仮説を検証する。次に、超微小逆位および近傍領域の配列と構造の特徴を精査し、精子ゲノムに対するリシークエンスを通じてde novo超微小逆位を同定することにより、超微小逆位が生じる分子機構を解明する。以上を通じて、全く新しい分子進化・集団遺伝マーカーである超微小逆位の生物学的意義を明らかにし、同時にゲノム最小レベルの構造変化が生物進化にどのような影響を与えたかを明らかにすることをめざす。 平成24年度は、計算機による高精度な超微小逆位検出法の開発を行った。申請者らが以前に開発した逆位同定プログラムを全面的に改良し、最小レベルの配列長(5-7 bp)をもつ逆位の同定精度を高めた。ここでは、逆位を考慮したペアワイズアラインメントのためのソフトウエアを新たに作成し、逆位ペナルティなどの超微小逆位を同定するための最適なパラメータ設定を決めた。このプログラムの精度評価を計算機シミュレーションにより実施し、擬陽性が著しく減少されることを確認した。 このプログラムを用いて、バクテリアからヒトまでゲノムが解読されているさまざまな系統の近縁種群および種内集団に超微小逆位を同定した。その結果、大腸菌、酵母、ハエ、イネ等を含め、調べた全ての系統で近縁種アラインメント内に超微小逆位がみつかった。これにより、超微小逆位が幅広い生物に普遍的な現象であることを示すことができた。また、超微小逆位のホットスポット候補領域の探索を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が平成24年度中に研究機関の移動を行ったことにより、研究の進展がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の遅れを取り戻し、研究を加速していく。特に以下の2点を実施する。 (1)超微小逆位が生じる生成機構の解明 超微小逆位の配列および近隣領域のゲノム構造を解析し、バクテリアからヒトまで普遍的なあるいは系統特異的な配列・ゲノム構造を抽出する。具体的には、超微小逆位および近隣領域に特異的な塩基組成、保存モチーフ、配列構造、染色体における位置、転移因子等を同定する。また、申請者らの最近の研究で示された「超微小逆位とゲノム構造の不安定性との相関」が普遍的特徴であるかを検証する。そして、あらゆる生物に共通な超微小逆位を特徴づける配列構造に基づいて、超微小逆位が起きる可能性が最も高い領域を特定する。さらに公共データベース中のゲノム配列データによる検証を行い、超微小逆位のホットスポット候補領域を絞り込む。 (2)超微小逆位が生じる生成機構の解明 前年度に引き続き超微小逆位の生成機構に関する解析を実施する。特に、超微小逆位が実際に起きていることを実験的に証明するため、マウスゲノムにおける超微小逆位のホットスポット候補領域について、マウス体細胞ゲノムと精子ゲノムを用いてターゲットリシークエンスし、精子ゲノムに起きたde novo超微小逆位を同定してその発生頻度を推定する。超微小逆位の多くはショートリードの1配列内に収まると考えられるため、次世代シークエンサを用いた大規模解析を行う。超微小逆位のホットスポット候補領域に対象を絞り込んで精子ゲノムの大量配列決定を行うことにより、1世代間での比較による超微小逆位を観察する。本解析のサンプル調整およびターゲットリシークエンスには、受託解析サービスを用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は特に超微小逆位のホットスポットの特定のための情報解析と、ゲノム配列決定実験による逆位の同定のために予算を使用する計画である。また、研究成果の発表のための論文投稿費や研究発表旅費としても使用する。 なお、研究分担者に次年度予算の一部を配分する。
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