本研究は、ゲノムに起こる超微小逆位が生物に普遍的な現象であるかを検証するとともに、超微小逆位の現象を実験的に検証し発生頻度を測定することを目的とする。まず、真核生物、古細菌、真正細菌の9系統のゲノム配列データを公共データベースから取得し、近縁種間や株間の全ゲノムアラインメントを作成して超微小逆位を探索したところ、9系統全てにおいて超微小逆位が同定された。この結果から、超微小逆位は生物に普遍的なゲノム構造変化であることが強く示された。次に、17系統のマウスの全ゲノムならびにマウスのがん組織のゲノムの全配列データを比較解析することにより、超微小逆位のホットスポットと考えられる領域を360カ所同定した。これらのホットスポット領域に実際に起きた超微小逆位を検出するため、多数のマウス精子ゲノムからホットスポット領域のゲノム配列を次世代シーケンサーで解読する実験を試みた。本研究の配列解析から、生殖系列での減数分裂が超微小逆位を起こすメカニズムの有力な候補に挙げられている。そこで、野生型マウスおよび減数分裂の表現型の変異を持つマウスの精子を用い、150カ所のホットスポット領域のゲノム配列を次世代シーケンサーで解読した。現在は以上の結果を論文発表すべく、実験結果の計算機による解析を進めている。これと並行して、ゲノム配列データから超微小逆位を検出するための計算機プログラムを改良し、より高い精度とともに、次世代シーケンサーを用いた解析に適する処理速度を得ることに成功した。以上の超微小逆位に関する研究成果は、2013年10月のCold Spring Harbor LaboratoryのGenome Informatics会議や、2014年3月の生殖系列の新規変異に関する国際シンポジウムにて、発表した。
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