キノコの全ゲノム多様性情報を取得し、ヒトの拡散についての新たな知見を得ることを目的とした本研究では、世界中に広範囲に分布しているが難培養性のためにゲノム多様性情報の報告例が少ないキノコ類を標的とした。そのモデルとしてチチタケLactarius volemusの解析を行った。10数個分の子実体を野外で採取、冷蔵保存し、採取後1種間以内に液体窒素で凍結・粉砕、CTAB法でゲノムDNAを抽出した。電気泳動によって高分子DNAの残存を確認した後、16SrRNA遺伝子領域の塩基非配列をサンガー法で解読、データベースとの照合により、チチタケである蓋然性が高いDNA試料1検体について、イルミナ社HiSeq2000によってペアエンドおよびメイトペアシーケンス(8kb)を行い、12.5ギガベースの塩基配列情報を取得した。これを、CLC Genomics Working Benchでアセンブリした。また、アセンブリの際には前年度までにロシュ社GS Juniorで得たシングルリードデータ約700Mb(他の地域より採集したチチタケの子実体に由来)をガイダンスリードとして投入した、その結果、およそ4500個のコンティグ(最大長970キロベース、最少1キロベース、N50=30キロベース)が得られた。推定ゲノムサイズは50メガベースで、既に報告のあるキノコ類のゲノムサイズと似通った大きさであった。マッピングされたリード情報から、ヘテロ接合状態の多型部位の調査したところ、およぞ20万の一塩基多型、2万の挿入/多型が検出された。非常に多型的であることが判明した。
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