研究課題/領域番号 |
24657173
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
海部 陽介 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (20280521)
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研究分担者 |
清水 大輔 (財)日本モンキーセンター, その他部局等, 研究員 (60432332)
西村 剛 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80452308)
矢野 航 朝日大学, 歯学部, 助教 (80600113)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 進化 / 人類学 |
研究概要 |
変形性斜頭(赤ん坊の柔らかい頭骨が外圧で歪む現象:DP)がヒト特有で、かつ人類進化史の中で生理的早産と関連して同時に現れ、それゆえ後者の進化を研究する際の示標として使えるという新しい仮説(申請者らは「DP仮説」とよ呼んでいる)を検証することが、本プロジェクトの目的である。そのため、(1)ヒト以外の霊長類に後天的なDPは存在しない、(2)ヒト以外の霊長類では出生時の頭骨の成長がヒトよりも進んでいる、の2つの予測について調査する。 本年度は(1)に関連するデータとして、日本人約400人分の頭骨計測データを収集した。具体的には、江戸由来の江戸時代人骨を国立科学博物館で、近世の沖縄島・久米島由来の人骨を沖縄県埋蔵文化財センターに赴いて調査した。データはまだ解析中であるが、既に入手してある類人猿の頭骨データと比較することによって、ヒトの方が歪みの程度が大きいという予想を数量的に検証できるだろう。 そのほか、第28回霊長類学会大会に参加して現状を発表し、聴衆から様々に有用なアドバイスを受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データを収集しながら予備解析を並行して進め検討を重ねていった結果、データ収集のストラテジーを若干変更することにした。上記(1)の一環として、当初は国内でのヒト以外の霊長類の計測データも収集する予定であったが、そうしたデータは既にある程度揃っているのに対し、ヒトのデータはまだ不十分であるとの認識に至った。そこで後者に時間と労力を集中投資することとした。上記(2)の調査項目として、日本モンキーセンターで育てられたチンパンジー個体のCT撮影を予定していたが、スケジュールが折り合わず実施できなかった。これは平成25年度に実施することにした。これらの変更に伴う影響は軽微である。(1)については後退ではなく方向修正であり、(2)は計画の遅れであるが、新年度に取り戻すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の予定として、当初アメリカ自然史博物館に赴いて海外の現代人のデータを収集し、シンガポールのラッフルズ博物館にてオランウータンのデータを採取することを想定していた。現在までに収集したデータの予備解析をもとに再検討した結果、平成25年度は、現在データが欠如しているオランウータンのサンプルサイズをできる限り増やすことが肝要であるとの考えに至った。そこで先の計画を改め、当該資料がより充実しているドイツの研究所での作業を計画している。また以前に収集したゴリラのデータで再確認したい部分が出てきたため、当該資料のあるベルギーの博物館にも寄る。
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次年度の研究費の使用計画 |
ドイツとベルギーの博物館にて4名が作業するために、海外派遣旅費が必要である。日本モンキーセンターに保管されているチンパンジー個体のCT撮影を行うため、運送費などを計上する。国内で打ち合わせを行うための旅費も必要となる。
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