研究概要 |
本研究は、指先皮膚血流量、指先容積脈波に着目し、圧迫負荷を用いることで、手指の血管機能(柔軟性および反応性)を評価する新しい指標を開発し、検証することを目的とした。本年度は、圧迫負荷による末梢循環反応について把握するため、圧迫圧を変化させた際の脈波波形解析を行い、既存の血管機能評価指標との関連性について検討した。 健康な成人男性8 名を対象に、圧迫負荷試験および血管機能検査を実施した。圧迫負荷試験は、35分間の仰臥位安静後、カフで右上腕を圧迫し、プラトー状態に達した時点で開放した。圧迫圧は20, 40, 60mmHg の3 条件とし、各条件2 回実施した。圧迫前から圧迫終了後まで、指尖容積脈波、前腕容積変化率、皮膚血流量4 部位(前腕、手背、手指基節、手指末節)、末梢血管径、心電図を連続的に、血圧を圧迫開始直前に、加速度脈波を圧迫開始直前と開放直前に測定した。 圧迫負荷時の末梢血管径は、カフ圧が上昇するに従い増加し、無負荷時と比較した結果、40, 60mmHg圧迫時にて有意に高値を示した。圧迫負荷時の脈波振幅は、カフ圧の上昇に伴い低下し、無負荷時と比較した結果、40, 60mmHg圧迫時にて有意に低値を示した。圧迫負荷時の加速度脈波各指標を圧迫条件間で比較した結果、60mmHg圧迫時のc/a が0, 20, 40mmHg圧迫時に対して有意に低値を示した。各圧迫条件において、圧迫時の加速度脈波評価指標と血管径変化率の関連を検討したところ、60mmHg圧迫時のc/a と血管径変化率の間に正相関がみられた。以上のことから、圧迫負荷の脈波波形および脈波波形解析によって得られる指標を用いることで末梢部の血液貯留能力を判定できる可能性が示唆された。
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