研究概要 |
H24年度に得られた結果をより詳細に分析したところ、60mmHg圧迫条件ではすべての対象者で圧迫時の脈波振幅及び加速度脈波指標で無負荷との差が見られ、圧負荷による血管機能変化を評価できたが、20, 40mmHg条件では変化がみられない者も確認された。圧迫負荷時の末梢部血液貯留や循環動態から静脈系血管機能を検討する際には、一定以上のカフ圧が必要があることが考えられた。 手指末梢部における血管反応性の評価手法を検討するために、健康な成人男性8名を対象に手首部圧迫負荷実験を実施した。圧迫負荷実験において、上腕部または手首部を圧迫用カフを用いて200mmHg負荷圧で5分間圧迫し、その前後の前腕部(上腕圧迫条件)または手指部血流量(手首圧迫条件)を測定した。血流量において、負荷前の値、圧迫解放直後の値、圧迫負荷前から解放直後への変化率、圧迫解放後1分間の平均値から、血管反応性を評価した。すでに確立されている上腕圧迫条件での前腕血流量の各指標と比較し、手首圧迫時の手指部血流量の変化動態が類似していたことから手首圧迫前後の手指血流量変化動態から手指部の血管反応性および柔軟性を評価できる可能性が示唆された。 圧迫時の加速度脈波各指標の有用性を検証するために、健康な成人男性11名を対象に、手指を冷水に浸漬する局所寒冷曝露実験を実施し、冷水浸漬時の指皮膚温変化と圧迫を利用した血管機能指標の関連性を検討した。その結果、圧迫負荷中の加速度脈波のd/aと寒冷誘発血管拡張反応発現時間との間に有意な負の相関が、圧負荷時のc/aと冷水浸漬時の最低指皮膚温の間に正相関が得られた。 以上のことから、圧迫負荷を用いることによって末梢部の血管柔軟性および血管反応性が評価でき、ヒトの環境適応能評価に用いることができる可能性が示唆された。
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