研究課題/領域番号 |
24657176
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00292376)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光 / 色 / 視覚生理 / 視覚心理 / 瞳孔 / 脳活動 / NIRS |
研究概要 |
網膜で受けた光は視覚野に伝えられ光の明るさや色の知覚が生じるだけではなく、網膜-視床下部路を介して、概日リズム、メラトニン分泌、瞳孔、体温、自律神経へ影響を及ぼす。前者を光の視覚作用と呼び、後者を光の非視覚作用と呼ぶが、両者の関連や相互作用についてはよくわかっていない。本研究では光の生理作用に強く作用する青色光と、それとは反対に心理的に強い影響力をもつと考えられている赤色光を用い、それぞれが引き起こす生理心理作用の違いを比較した。色覚に異常のない健康な大学生男女40名を対象とした。光刺激について、色光は青色光(465 nm)と赤色光(635 nm)の2種類で、光の強度はフォトン密度で統一した3条件(低強度,中強度,高強度)とした。光源にはLED光源を用いた。光の非視覚的な作用として瞳孔径を測定し、光の視覚的な作用として後頭部の総ヘモグロビン濃度の測定を行った。光の心理的な作用として光の明るさ感も調べた。その結果、光照射によって引き起こされる瞳孔の縮瞳および後頭部の総ヘモグロビン濃度の上昇は、赤色光の方より青色光の方が有意に大きかった。主観的な明るさ感には色光の有意な違いはなかった。指標間の関連性を調べるために相関分析を行った結果、瞳孔径、総ヘモグロビン濃度、明るさ感のそれぞれの間に有意な相関は認められなかった。本実験から、主観的な明るさ感が光の視覚および非視覚作用に影響を及ぼしている可能性は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光の色光の影響を瞳孔の非視覚作用と後頭部脳活動の視覚作用の両方から測定することができ、両者の関連性を調べることができた点は評価できる。ただし、それぞれの指標の数が少なく限られているので、今後はメラトニン分泌や自律神経系の指標なども指標として追加する必要がある。また、光の作用について被験者の思い込みなどを事前に調べ、思い込みがどのように生体へ影響するかについて明らかにするつもりでいたが、こちらの進捗は予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、実験の前に光の生理心理作用に関する知識や思い込みついてのアンケート調査を行う。その結果を踏まえたうえで実験を行い、被験者の主観的評価や思い込み(先入観)が、どのように実験結果に反映されるかについて検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、3月中のデータ整理ために予定していた雇用費が、作業の進捗の具合で予定額より少なくなったためである。今回発生した次年度使用額は雇用に伴う人件費で使用する予定である。
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