光の色光の違いによる生理作用には、メラノプシンと呼ばれる光受容体に依存し、光の非視覚経路を介して青色光に強く反応する指標や、色の見えなどのように視覚経路を介した心理的な作用に依存して強く反応する指標があると考えられる。本年度は、複数の生理指標を用い、色光の影響の現れ方の違いを比較することを目的として実験を行った。また、光色の心理的評価と生理的な影響の関連性を明らかにすることも目的とした。男子大学生17名を対象に、夜間に異なる色光(青色光、赤色光)に3時間曝露した際の、生理反応と心理反応の測定を行った。その結果、瞳孔の対光反応とメラトニン分泌の光抑制に関しては青色光が強く作用していることが分かった。直腸温と覚醒度においては色光条件間での差は認められなかった。一方で、心拍数は青色光よりも赤色光の作用を強く受け、赤色光条件で夜間の心拍低下が有意に抑えられていた。色光の主観評価では三つの因子が抽出され、静-動などの活動性と重い-軽いなどの力量性の得点は赤色で高く、快-不快などの評価性に関しては青色光で高い得点を示した。生理反応と心理評価の相関分析を行った結果、評価性得点と夜間の心拍数の変化量の間に有意な負の相関が認められた。また力量性得点と直腸温の変化量の間に有意な正の相関もみとめられた。以上の結果から、従来から光の非視覚的作用の指標として用いられてきたものの中には、メラトニンの抑制反応や瞳孔の縮瞳反応のようにメラノプシンの反応に強く依存する指標と、心拍数など心理的の影響を受けやすいものが存在するとこが明らかとなった。
|