研究課題
本研究は触覚情報を精度よく得るためにヒトは特定の受容姿勢・行動をとるものなのか,そして,それらの姿勢・行動は特定の情報のモダリティに依存するのか,さらに,特定の受容姿勢を維持するために生じる自己受容感覚は触覚の正確さにどのような影響を及ぼすのかを実験的に明らかにすることを目的として研究を進めた.そこで,触覚情報を受容した際の脳内における情報処理過程を規定する研究として,空気噴流刺激を用いて,掌上の刺激呈示部位の違いにより,体性感覚誘発脳磁界に現れる傾向を捉えることを目的として実験を行った.特に掌の刺激提示部位をブロックに分けて評価した.触覚刺激提示時の誘発脳磁界応答を計測し,反応強度と平均潜時についてブロック間の変化を求めた結果,刺激呈示部位が異なっても,触覚受容器の密度や神経支配領域に起因する有意な変化がSIの誘発脳磁界の振幅には見られないことがわかった.また,一次体性感覚野の反応から,誘発脳磁界の応答は触覚受容器の密度や神経支配領域よりも,刺激の物理量をより反映した活動であることが示唆された.また,触覚による情報獲得時の受容姿勢の影響として,付加荷重変化による触覚感度の変化について実験的に求める方法によるアプローチも行った.実験の結果,ほとんどの提示圧力条件においておもりが重くなるに従って提示圧力に対する知覚圧力を弱く感じており,3.2kgにおいては0kgに比べ約11.4%提示圧力を弱く知覚していることがわかった.おもりが重くなるに従って提示圧力を弱く知覚するという結果はsize-weight illusionのように異なる感覚間での相互作用というものが深部感覚と皮膚感覚の間において生じたのではないかと考えられ,おもりを装着したことによる深部感覚の変化により,掌に強い刺激が提示されると予測し,実際に提示された刺激を弱く知覚したのではないかと考えられた.
すべて 2013
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モバイル学会誌
巻: 3 ページ: 33-38