研究概要 |
世界最高速度をもつ車軸藻ミオオシンXIとシロイヌナズナミオシンXI-2とのキメラミオシンをつくり,アクチン滑り運動速度を測定したところ,シロイヌナズナミオシンXI-2と比べて,速度が2倍以上に上昇した。これと反対にシロイヌナズナミオシンXI-2よりも速度が1/10遅いヒトミオシンVbとシロイヌナズナミオシンXI-2とのキメラミオシンはシロイヌナズナミオシンXI-2と比べて,速度が数倍落ちた。 これらの2つのキメラミオシンXI-2,および野生型シロイヌナズナミオシンXI-2をそれぞれ,シロイヌナズナミオシンXI-2の遺伝子欠損株に導入し,野生型シロイヌナズナミオシンXI-2のプロモーターのもとで発現させた。車軸藻ミオシンキメラXI-2を発現した株の細胞の原形質流動速度は野生型ミシンXI-2を発現させたものより約2倍速くなり,一方,ヒトミオシンVbを発現させたものは,流れがほとんどみえなかった。原形質流動速度と一致して,地上部の茎,葉の大きさが車軸藻ミオシンキメラは大きくなり,ヒトミオシンVbキメラは小さくなった。また,車軸藻ミオシンキメラの茎,葉が大きくなったのは,細胞数が増えたのではなく,細胞の体積が増えたことによることがわかった。これらの結果は,原形質流動速度は植物の大きさを規定する主な要因であることを示唆するとともに,車軸藻ミオシンキメラを用いることによる原形質流動速度の促進は植物の大きさを促進させる非常に有益なシステムということを示している。 また,車軸藻ミオオシンXIとイネXIBミオシンとのキメラミオシンをアクチンプロモーター存在下で野生型イネの日本晴れに発現させたがこちらは最終的な収量などには差が見えなかった。野生型ミオシンXIBが存在していたこと,およびプロモーターがミオシンのものでなかったことが原因として考えられる。
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