研究課題
イネの4倍体は既に作成に成功しているが、本年度は3つの同質倍数性シリーズ(2倍体、3倍体、4倍体)を完成させるため、3倍体の作成を行なった。4倍体を雌親、2倍体を花粉親にして交雑を行なったところ、胚乳が完全に発達した種子は得られなかったものの、胚の形成が確認され、未熟胚培養を行なうことによって3倍体のイネを得た。4倍体に関しては、葉の長さ、幅、茎の長さ、穂の形質等を2倍体と比較した。その結果、イネ品種日本晴の4倍体個体においては、葉のサイズ等に大きな変化は見られないことが明らかとなった。また、節間の長さ、粒数に関しては逆に4倍体が小さくなる傾向が認められた。一方で種子サイズは2倍体より4倍体が有意に大きくなっており、器官ごとに倍数化による効果は異なることが明らかとなった。次に葉における4倍体と2倍体間の細胞のサイズの比較を行った。その結果、葉の細胞のサイズは4倍体の方が大きいことが明らかとなった。葉のサイズは変化しなかったことと考え合わせると、4倍体では細胞分裂活性が2倍体より低下していることが考えられた。続いて、4倍体と2倍体における遺伝子発現の変化を解析した。ゲノムのメチル化に関わる遺伝子と、トランスポゾンの活性に関わる遺伝子の発現量を比較したところ、どちらも4倍体で高い発現が認められた。これらの結果から、イネにおいてはゲノムの倍加によるエピジェネテックな影響が器官ごとに異なること、細胞サイズの増加と共に細胞分裂を減少させるメカニズムが倍数体で働いていること、ゲノムの安定性に関わるいくつかの遺伝子発現が変化していることが示唆された。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Plant & Cell Physiol.
巻: 55 ページ: 42-51
10.1093/pcp/pct154
Nucleic Acids Res.
巻: 41 ページ: 1214-122
10.1093/nar/gks1122
Planta
巻: 238 ページ: 229-237
10.1007/s00425-013-1895-z
Amer. J. Plant Sci.
巻: 4 ページ: 1-9
J Exp Bot.
巻: 64 ページ: 2049-2061
10.1093/jxb/ert060