本研究では、相同組換えを高頻度で誘発し、効率的な遺伝子ターゲッティング法の確立を目的としている。そのため、前年度では二種類のコンストラクトを作成した。本年度は、ターゲッティングコンストラクトpG2LxのGFP遺伝子をHPT(ハイグロマイシン耐性遺伝子)に置換し、LoxP間の組換えにより、HPT遺伝子が発現するよう変更した。このコンストラクトpB2Lxに、縦列型反復配列(180-bpファミリー)クラスターを挿入し、Cre植物発現ベクターと共形質転換した。ハイグロマイシン耐性を示す複数の形質転換体が得られたが、pB2Lxコンストラクトの配列は確認されたが、Cre遺伝子を含まないものが多かった。一部の形質転換体については、LoxPの組換えによるものではなく、T-DNAのタンデム挿入によってハイグロマイシン耐性が発現したことが明らかになったが、LoxP間の組換えにより耐性を獲得しているものも確認された。得られた形質転換体について、T-DNAの挿入位置をFISH法により調べたところ、セントロメア以外の場所に挿入されているものが多く認められた。しかし、その挿入位置に180bp反復配列は確認されなかった。もし全長が挿入されていれば、10kb以上の180bp配列クラスターが存在すると考えられるため、検出できないのはいずれかの段階でコピー数が減少したためであると推定された。しかし、アグロバクテリウム中で反復配列がすべて消失してしまう現象は確認できなかった。一方で、ほぼ全長のインサートをもつクローンは継代培養後も比較的安定であった。以上のことから、植物細胞内に導入された反復配列が除去される何らかの仕組みが示唆された。その一つとして、内在性セントロメアに、外来の180-bpクラスターが相同組み換えで移入されることも考えられた。
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