研究課題
放線菌Streptomyces lavendulaeのnon-ribosomal peptide synthetaseのひとつであるBPSAタンパク質は、グルタミンを基質とし単独で青色色素であるindigoidineを生産する。しかしながら、その活性化にはphosphopantethein transferase(PPTase: ホスホパンテテン転移酵素)による修飾(セリン基へのホスホパンテテン付加)が必要である。したがって、植物体でindigoidineを生産させるには放線菌のPPTase(SVP)遺伝子も同時に導入する必要がある。まず放線菌のBPSAとSVPをCaMV35Sプロモーターでドライブすることにより高発現させるコンストラクトを作成し、シロイヌナズナに形質転換した。しかし、幼苗、花ともに青色呈色は見られなかった。放線菌のゲノムは極端にGCリッチであり、コドン使用頻度に大きな偏りがあることから、シロイヌナズナではmRNAが発現してもタンパク質が効率的に翻訳されない可能性が考えられた。そこでコドンをシロイヌナズナの使用頻度に合わせて改変した人工遺伝子を作成した。まず、この改変型BPSAとPPTaseが青色色素を合成する能力があることを確かめるため、大腸菌に両遺伝子を導入し、IPTG誘導的に発現させた。その結果、大腸菌は青色呈色を示したことから、改変型BPSAとSVPは正常に機能することが示された。次に、この改変型遺伝子をCaMV35Sプロモーターでドライブしたキメラ遺伝子を植物体に形質転換した。現在のところ幼苗(胚軸など)での青色呈色は確認できておらず、今後、花等での呈色を確認する。また、CaMV35Sプロモーター以外のプロモーターによりドライブさせたコンストラクトとその形質転換体も作成した。
3: やや遅れている
予定した実験は計画通り進んでいるが、植物体内での青色色素の生産は認められていない。
これまで作成した形質転換体の表現型・導入遺伝子の発現を確認する。また花弁特異的なプロモーターによりドライブしたコンストラクトを作成するとともに、プラスチドなど基質であるグルタミンが存在するオルガネラへターゲットさせるコンストラクトなどを作成し、形質転換を行うなど、複数の方法で問題の克服を試みる。
分子生物学的実験を中心とした研究を進めることから、消耗品費として1,940,456円(内訳:分子生物学用試薬1,140,456円、プライマー・その他試薬600,000円、ガラス・プラスチック類200,000円)、またDNAシーケンス(その他)に300,000円を使用する予定である。