研究概要 |
初年度は主として材料となる植物種の特定と導入すべき遺伝子のクローニングを中心に実験を行った。マメ科、キク科、ウリ科などの中から種々の種子実生を材料とし、アグロバクテリアによる遺伝子導入実験を行った。核局在型緑色蛍光タンパク質(35S::HistoneH3-GFP)の発現を指標として、子葉、胚軸組織の細胞を蛍光顕微鏡によって観察し、核に蛍光を示す細胞の頻度を調査したところ、ヒヨコマメ、ササゲ、ヒマワリにおいて組織片における比較的高い蛍光出現頻度が観察された。発現誘導型ベクター(pER8)を用いてヒマワリ、ササゲの実生組織ににWox5, Wusの導入を試み、2,4-DあるいはNAA と発現誘導物質(エストロゲン)存在下で培養したが、これまでのところコントロールの比較で顕著な形態的差異が認められていない。つまり当初計画した不定根誘導とともに遺伝子発現誘導によって不定芽または不定胚が誘導されるという現象は今のところ観察できていない。 Wox5, Wus以外にもより強力に形態形成(個体再分化)を誘導できる遺伝子として、2012年にArabidopsis において不定胚を誘導する作用のあることが報告されたRKD4遺伝子をpER8にクローニングし、タバコに導入した。今のところ形質転換体(タバコ)の組織培養においてエストロゲン存在下で顕著な形態形成反応は認められないが今後自殖種子の形成を待って、実生による再調査をする。
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