• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

倍数性植物における同祖遺伝子計数機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24658008
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関福井県立大学

研究代表者

村井 耕二  福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70261097)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードコムギ / 同祖遺伝子 / MADSボックス遺伝子 / エピジェネティック
研究概要

パンコムギは、祖先2倍体種由来のA, B, Dと3つのゲノムを持つ異質6倍数体種である。それぞれのゲノムが内包する遺伝子セットは基本的に同じであるため、パンコムギは、3つの重複した遺伝子(同祖遺伝子)を持つことになる。パンコムギ品種Chinese Spring(CS)クラスE MADSボックス遺伝子WLHS1の同祖遺伝子は、WLHS1-A(Aゲノム同祖遺伝子)は遺伝子構造が変化しており、WLHS1-Bはエピジェネティックにサイレンシングされており、WLHS1-Dのみが機能的であると考えられる。本研究では、WLHS1遺伝子をモデルに、倍数体における「同祖遺伝子計数機構」の存在を証明する。
1. CSにおける4D染色体欠失系統の解析
WLHS1-D遺伝子は、4D染色体に座乗する。WLHS1-Dを含むあるいは含まない欠失領域をもつ4D染色体長腕部分欠失系統の幼穂におけるWLHS1-B遺伝子の発現変動をリアルタイムPCR法により調査した。その結果、WLHS1-Dの欠失に伴うWLHS1-Bの明確な発現変動は観察されなかった。
2. クラスD MADSボックス遺伝子(WSTK)の同祖遺伝子の解析
WLHS1遺伝子の解析結果が予想通りの結果にならなかったため、クラスD MADSボックス遺伝子(WSTK)の同祖遺伝子を材料に、「同祖遺伝子計数機構」の解明を行うこととした。6倍体および4倍体コムギにおけるWSTK遺伝子の同祖遺伝子の発現を調査したところ、いずれにおいてもBゲノム同祖遺伝子(WSTK-B)が高発現しており、その他の同祖遺伝子はサイレンシングされていることが判明した。4倍体のマカロニコムギと2倍体のタルホコムギから人為的に作出した合成6倍体でも、常にWSTK-Bのみが高発現しており、このWSTK遺伝子においても「同祖遺伝子計数機構」の存在が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

倍数性は植物に広くみられる現象である。パンコムギは、祖先2倍体種由来のA, B, Dと3つのゲノムを持つ異質6倍数体種であり、それぞれの遺伝子に関して、基本的にA, B, Dそれぞれのゲノムに同祖遺伝子が存在する。本研究では、パンコムギのクラスE MADSボックスWLHS1遺伝子をモデルに、倍数体における「同祖遺伝子計数機構」の存在を証明することを目的とした。「同祖遺伝子計数機構」の解明は、倍数性作物の新たな育種技術の確立につながると考えられる。平成24年度の研究により、当初予想していたような、機能的なWLHS1-D遺伝子の有無により、WLHS1-B遺伝子のサイレンシングパターンが変化するという明確な結果は得られなかった。そこで、クラスE遺伝子と同様にMADSボックス遺伝子で、胚珠形成に関与するクラスD遺伝子(WSTK)の解析を行った。その結果、WSTK遺伝子では、2倍体ではA, B, Dゲノムそれぞれの遺伝子が発現しているが、4倍体(AABB)では、WSTK-A(Aゲノム同祖遺伝子)がサイレンシングされ、6倍体(AABBDD)では、WSTK-Aに加えてWSTK-Dもサイレンシングされることが明らかとなった。しかも、人為的に作出した合成6倍体でも同様のパターンを示した。この結果は、まさに本研究の目的である「同祖遺伝子計数機構」が存在することを示唆しており、研究の方向転換はあったが、目標に向かって進んでいると考えられる。

今後の研究の推進方策

花器官形成に関与するマスター調節遺伝子であるMADSボックス遺伝子における「同祖遺伝子計数機構」の存在を証明するため、以下の研究を行う。
1. クラスB遺伝子(WPI-1)およびクラスC遺伝子(WAG-2)における同祖遺伝子の発現解析:WSTKの解析で用いた供試材料(2倍体祖先種、野生型および栽培型4倍体種、パンコムギ以外の6倍体種、アジアおよびヨーロッパのパンコムギ品種、新旧の合成6倍体種)を用い、クラスB遺伝子(WPI-1)およびクラスC遺伝子(WAG-2)の同祖遺伝子の発現パターンを調査する。
2. クラスD遺伝子(WSTK)における同祖遺伝子のエピジェネティック制御解析:4倍体におけるWSTK-Aのサイレンシングがエピジェネティック制御によるかどうかを明らかにするため、WSTK-Aのプロモーター領域のバイサルファイト・シークエンス解析を行い、DNAのメチル化レベルを調査する。また、H3K4me3およびH3K27me3抗体を用いたChIP解析により、ヒストン修飾を調査する。6倍体コムギにおけるWSTK-AおよびWSTK-Dのサイレンシングがエピジェネティック制御によるかどうかも同様に調査する。
3. 倍数体化によって発現変化するsmall RNAの同定:同祖遺伝子特異的なエピジェネティック制御がsmall RNAの効果であるかを検討するため、合成6倍体およびその両親を用いて、倍数体化に伴って発現変化するsmall RNAを同定する。予算的に可能であれば、次世代シークエンサーを用いる。さらにそれらのsmall RNAから、WSTK同祖遺伝子をターゲットとするものがあるか探索する。

次年度の研究費の使用計画

物品費として、リアルタイムPCR発現解析用の試薬、バイサルファイト・シークエンス用の試薬、ChIP用の試薬およびプラスチック器具類などを購入する。旅費は、学会での研究発表のために使用する。謝金は実験補助者のために使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 倍数性コムギにおけるクラスD MADSボックス遺伝子の同祖遺伝子発現パターンの変異2013

    • 著者名/発表者名
      田中美久ら
    • 学会等名
      日本育種学会第123回講演会
    • 発表場所
      東京農業大学
    • 年月日
      20130327-20130328
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi