研究課題/領域番号 |
24658017
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
渡邉 修 信州大学, 農学部, 准教授 (30360449)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 外来生物 / 雑草防除 / 発芽生態 |
研究概要 |
特定外来生物のアレチウリは,日本各地の河川敷や飼料畑を中心に蔓延し,生物多様性だけでなく,農業生産や河川管理にも影響を与え,各地で防除作業に多大な労力とコストがかけられている。アレチウリは繰り返し同じ場所で発生し,大型の子葉を展開するため,安価で他草種への影響が小さいメッシュ被覆資材を使用し,アレチウリの大型の実生がメッシュを通過できないような環境を作り出し,発生抑制効果を明らかにする。また,メッシュ資材の下で多くの実生を発生させることで,長期的にシードバンクを減少させる技術を検討する。 平成24年度はメッシュ被覆資材を利用したアレチウリ発生抑制試験を実施した。目開き4000μmの安価な防風ネットをアレチウリ多発エリアに1.7m×4mの範囲でそれぞれ3プロット設置し,5月からメッシュを通過するアレチウリの個体数をカウントした。対照区では設置後2ヶ月で平均29.1個体/m2が発生し,メッシュ資材導入区(4000μm)では1.7個体/m2であり,発生数を大幅に抑制した。メッシュ内部のアレチウリは生育が大きく阻害され,開花結実個体は確認されなかった。メッシュ内部の光環境を明らかにするため,光量子センサーを8月上旬に設置し,メッシュ資材内外で15分ごとの連続測定を行った。8月中下旬では対照区の光量子束密度は10日積算値で約2000 uM/m^2s,メッシュ内部では約600 uM/m^2sであり,地上部付近の光量子束密度は約32%低下した。メッシュ内部の光量子束密度は9月以降も約600 uM/m^2sで推移し,メッシュ資材の設置は生育の物理的抑制に加えて光合成も大きく阻害されることが示され,アレチウリ発生抑制に効果的であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メッシュ被覆資材によるアレチウリ発生抑制は予備試験およびH24年度の研究から有用性が高いと判断され,成果報告を雑草研究(2013年,58巻別号P39)に発表した。また,メッシュ資材の設置によって光量子束密度が30%ほど低下しアレチウリの生育に大きな影響を与えることが明らかとなった。アレチウリ多発エリアにおける埋土種子調査については,H25年4月現在でサンプリングが終了しており,種子数のカウントと空間補間による密度マップ作成を現在行なっている。アレチウリ多発エリアにおける土壌水分,土中温度,群落の光環境の測定は野外センサー設置により現在継続している。
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今後の研究の推進方策 |
アレチウリの発芽生態を明らかにするため,アレチウリ種子を採集し(前年度に完了),大学内の隔離施設において発芽試験を実施する予定である。アレチウリの発芽試験を行うため,特定外来生物飼養等許可申請を行い,大学内の隔離施設においてH24年度から3年間の飼養許可を取得した(特定外来飼養許可:12000374)。既存の論文(Mannら1981)ではアレチウリが15℃でほとんど発芽しないことが報告されているが,予備試験では発芽が確認されているため,低温条件下で発芽可能かH25年度の研究で明らかにする予定である。長野県内のアレチウリ集団が種子発芽に関して低温反応性が高いかどうか,人工気象器での試験で明らかにする。メッシュ資材の設置により群落内の光量子束密度が大幅に低下することが示されたため,遮光条件下でのアレチウリの種子発芽反応を明らかにし,メッシュ資材内部で埋土種子をどの程度消費していくか,明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
異なる温度と光条件におけるアレチウリの発芽反応性を明らかにするため,現在研究室に設置している2台の人工気象器(LH-40CCFL)に加え,同機器を本研究課題において2台追加購入し,精密な温度条件下での発芽特性の解明を効率的に実施する計画である。野外におけるアレチウリの出芽パターンのデータ収集については,研究室学生のパート雇用により,効率的に実施する予定である。また,農研機構の雑草研究チームおよび長野県農業試験場との情報交換を進め,アレチウリ防除に向けた基礎データ収集を実施する。
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