研究課題/領域番号 |
24658018
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
足立 文彦 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (10335549)
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研究分担者 |
井藤 和人 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (20273922)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サツマイモ / 接木 / 物質生産 / 内生菌 / 生物的窒素固定 / アセチレン還元法 / 窒素固定活性 |
研究実績の概要 |
平成24年度に接木によって穂木から台木に感染した窒素固定エンドファイトの窒素固定能が接木体の生育促進効果の主要因であり,品種自体の影響は小さいこと,さらに窒素収支測定も当初計画に先行して実施し,普通穂木の窒素固定率が無菌穂木よりも高く,普通穂木間でもその率に違いがあることを明らかにできたことから,本年は普通穂木の窒素固定活性に注目し,異なる生産者(A,B,C,D)のサツマイモ品種(ベニアズマ,べにはるか,パープルスイートロード)を同条件で栽培し,窒素固定活性,物質生産,収量と食味(蒸芋糖度)を比較した. その結果,低土壌窒素条件における収穫期の収量と食味は,いずれの品種でもA生産者の育成した苗が高く,C生産者が低かった.そこで,それぞれの苗のアセチレン還元活性を収穫期に求めると,いずれの品種でもA生産者のサツマイモの窒素固定活性が高く,C生産者が低かった.アセチレン還元活性は個体間でバラツキが大きく,明瞭な品種間差が認められた.同活性はサツマイモの個体部位によっても大きな違いがあり,細根,塊根,茎地下部の活性が高く,地上部は概ね低かった. 以上から,接木体の生育促進の主要因と考えられる普通穂木に共生するエンドファイトの窒素固定活性は,1.同じ品種であっても苗の育成条件によって変化する,2.個体間のバラツキが大きい,3.窒素固定活性に品種間差がある,4.窒素固定活性の高い部位があることが明らかにできた.すなわち,生育促進効果の高い穂木を採取するには留意点が多いことがわかった.ただし,窒素固定活性によってエンドファイト密度を評価するには問題があるため,今後,採取したそれぞれのサンプルからエンドファイトの同定とnifH遺伝子発現量の評価を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に接木体の生育促進効果の主要因が明らかにでき,品種自体の影響が小さいこと,さらに窒素収支測定も当初計画に先行して実施できたため,本年は,24年度の研究結果の疑問点である,なぜ普通穂木間で生育促進効果と窒素固定能に大きな差違があるのかについて深く掘り下げることができた. その結果,当初計画では想定していなかった,窒素固定活性の品種間差,生産者による違い等の知見を得ることができた.これらから計画は概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
エンドファイトの窒素固定活性は,同じサツマイモ品種であってもその苗の育成条件によって変化すること,個体間のバラツキが大きいこと,窒素固定活性にサツマイモ品種間差があること,窒素固定活性の高い部位があることが明らかにできた.今後は先ずエンドファイトの同定作業を行い,苗の育成条件の差がエンドファイトの違いによるものか,あるいは,苗作りによるものかを明らかにし,品種間差,個体間差,部位間差の要因を解明する.そして,最も生育促進効果の高いエンドファイトを選抜する.一方,接木体の土耕栽培では水耕栽培ほど明瞭な差が生じないことから窒素条件,土壌由来の微生物の影響を考慮して研究を進める必要がある.
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