我が国のダイズ栽培では,梅雨と重なる出芽期から幼苗期にかけての湿害が生産の不安定要因の一つになっており,耐湿性品種の作出が望まれている.過湿土壌では根圏がO2 不足となることが一般的に知られているが,湛水した水田転換畑ではCO2 濃度が上昇するなど,湿害には複数の要因が関与することが明らかになっている.本研究では,実際の転換畑における湛水条件が土壌溶液中の溶存O2 濃度及び溶存CO2 濃度に及ぼす影響を評価すると共に,両者を一定に保つ水耕栽培法を開発し,低O2 条件および低O2+高CO2 条件がダイズ初生葉展開期の生育に及ぼす影響を評価した.その結果,実際の転換畑において湛水処理を行うと土壌溶液中のCO2濃度は150mg/L以上になることが明らかとなった.また,低O2 単独よりも,高CO2 が加わることにより,根の生育は著しく抑制された.さらに,その抑制程度には品種・系統間差異が認められ,耐湿性品種の選抜・育成には高CO2 耐性についても考慮する必要のあることが明らかであった.本研究で開発した水耕栽培法は,低O2+高CO2条件以外にも種々の条件を設定することが可能であり,複合ストレスである過湿害の検定法として有効である.
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