マメ科作物の栽培において高い生産性を確保するためには,根粒からの固定窒素の供給を高く保つことが必要であり,そのためには活性の高い多くの根粒を形成させることが肝要である.本年度は1)補光による生育初期及び子実肥大期の根粒形成促進技術の開発,2)根粒着生促進技術のマメ科作物生産への応用,の2つの小課題についての研究を行った。 1):前年度の研究において,ダイズ発芽時に遠赤色光を照射することで,初期の根粒形成は抑制されるが,その後の根粒形成は有意に促進されるという結果を得ていた。そこで今年度もその再現性を確認した。その結果,遠赤色光を3週間照射後,太陽光のみで4週間栽培を継続すると根粒数が有意に増加していることが確認できた。 2):前年度の研究において,遠赤色光を3週間補光してその次の一ヶ月は太陽光のみで育て,植物体の成長や根粒数を調査した。その結果,3週間後の根粒数は対照区と比較して少なかったが,さらに一ヶ月後の根粒数は対照区よりも有意に多かった。最初に抑制されていた根粒形成が補光をやめたことで急激に促進されたものと考察した。そこで今年度は,3週間の遠赤色光の補光をおこなったダイズを圃場へ直接播種し,収量調査をおこなった。その結果,遠赤色光照射によるダイズ茎の徒長によって,倒伏してしまった個体が多く見られ,そのような個体の成長が芳しくなかったために,形成された根粒数は減少していた。また同様の理由で収量性の向上は果たせなかった。今後は遠赤色光の照射時間を1週間,2週間などの条件でおこない,倒伏が起きない条件を見極める必要があると考えられた。
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