研究概要 |
本研究は,全ゲノム情報が利用可能なブドウ属(Vitis) を用いて, 異倍数間交雑によるゲノム量の変化が,胚発生や栄養器官の生育に対して与える影響を全ゲノムレベルで調査し,異倍数体間交雑応答の分子制御機構を明らかにしようとするものであり,研究実績の概要は以下の通りである. 昨年度に引き続き,ヨーロッパブドウ(V. vinifera)‘Rosaki’ と雄性不稔のアメリカ系台木ブドウ(V. riparia × V. berlandieri)‘5BB’ の二倍体(2x) およびコルヒチン処理によって作出したそれらの四倍体個体 (4x) を用いて,[2x × 2x],[2x × 4x],[4x × 2x], [4x × 4x] (いずれも’5BB’ x ‘Rosaki’)の交雑を行い,胚と胚乳の発生過程を顕微鏡観察し,異倍数体間交雑と同倍数体間交雑において,胚発生過程の観察を行ったところ,多くの交雑組み合わせにおいて,開花30日後の胚乳の形態に差異が見られ,胚乳中のタンパク質顆粒蓄積が多い方が,形成された種子の発芽率が高くなる傾向がみられた. 倍数性の変化や両親ゲノムのバランス崩壊は,主にクロマチン構造の修飾などを通じて,非相加的調節遺伝子の発現を制御し, 形質変化を引き起こすと考えられている.そこでブドウ交雑後代 (2x, 3x, 4x) において, 異倍数間で生育が異なるステージでIllumina社の次世代シークエンサーHiSeq2000とSNPs情報を利用したRNAseq解析を行うためのRNAサンプルの調整を行い,シークエンシング解析に供したが,RNAの質が低かったため,処理区毎の比較が統計的に有意なレベルで行うことが出来なかった.このため同倍数間と異倍数間の交雑をプールしてデータ解析を行ったところ,異倍数間交雑ではストレス応答関連遺伝子の発現が多かった.
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