研究概要 |
2013年度においては、受粉後の低夜温がチェリモヤの果実品質に及ぼす影響、レイシの種子の形態形成に及ぼす気温と遺伝的要因の影響とレイシ花粉の発芽に及ぼす温度条件の影響について調査した。 チェリモヤでは、夕方の受粉から翌朝までの夜温が果実品質に及ぼす影響を明らかにするため、受粉後直ちに発泡スチロール製の小型温度制御装置を樹上に取り付け、受粉した花の周囲の夜温を4, 6, 8, 10, 12, 17, 22, 27, 32, 35℃に制御した。その結果、受粉後受粉後に夜温が8℃より下がると種子数や果実の対称性が著しく低下することが示された。また、受粉前の数日間の最低気温も種子数に強く影響した。これらのことから、夜温が低下しやすい春には、8℃以上に加温することが奇形果の発生抑制に効果的であることを指摘した。 レイシでは、2品種を用いて種子形態の違いによる果実特性の違いを明らかにしたうえで、種子形態に違いを及ぼす要因として、低温による胚発達の抑制、花器の形態異常、単為結果の可能性を検討した。受粉後3日間の夜温を発泡スチロール製の小型温度制御装置で7、12、17℃に制御し、受粉後2、3、4、5、8週間後の果実残存率を記録し、果実の形態と品質を記録した。放任受粉の別個体から発達段階の異なる花および幼果を採取し、パラフィン包埋後にミクロトームで切片を作成し、切片をマイヤー酸性ヘマラウン溶液で染色した。その結果、レイシは品種によっては一定温度で単為結果する性質を持つことを指摘した。また、顕微鏡観察の結果、委縮した胚や卵細胞のない胚が各発達段階でしばしば観察された。このような形態異常も痕跡程度の種子しかない果実の発生に関わっている可能性があることを指摘した。
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