通常、種子には花粉親が影響を及ぼすが、果肉や果皮などの種子親由来の組織では花粉親の影響がないとされている。しかし、果肉や果皮に花粉親の影響が出ることをメタキセニアと呼び、ナツメヤシやワタなどでその現象が報告されている。ニホンナシにおいてもメタキセニアが存在することを明らかにしてきたが、ニホンナシを含む全ての植物で分子メカニズムは解明されていない。そこで、本研究では新たにmRNAとmiRNAのトランスクリプトーム解析を行い、メカニズム解明を目的として花粉親の違いによる遺伝子発現の差異を調査した。今年度はまず、花粉親が果実形質へ及ぼす影響を見る目的で、ニホンナシ‘幸水’に、5品種の花粉を人工授粉し、受粉1ヶ月後、GA処理区及び未処理区を設け、経時的に果径調査およびサンプリングを行い、収穫期には果実品質調査を行った。続いて花粉親の違いによる遺伝子発現の差異について調査した。開花1週目の種子からmRNAを調整し、ライブラリー作成後、次世代シーケンシング解析を行った。さらに、果肉からmiRNAを精製し、Small RNAライブラリーを作成し、次世代シーケンシング解析を行った。結果、収穫期の‘幸水’においてもメタキセニア現象が確認された。これまでの‘豊水’などとの結果から種子親と花粉親の組み合わせにより果実サイズが異なると示唆された。また、花粉親の違いで細胞肥大及び分裂の機構が異なる可能性が考えられた。種子のmRNAとmiRNAのRNA-seq解析により多数の遺伝子に花粉親の違いで発現に差が見られた。
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