研究課題/領域番号 |
24658032
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
鉄村 琢哉 宮崎大学, 農学部, 教授 (00227498)
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研究分担者 |
冨永 るみ 広島大学, 生物圏科学研究科, 講師 (20373334)
澤 進一郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00315748)
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キーワード | 園芸学 / メリステム / ペプチドホルモン / 果樹 / 組織培養 |
研究概要 |
植物ペプチドホルモンに関する基礎的研究は、近年めざましい発展を遂げているものの、実用化を目指した実験は行われておらず、本研究はその実用化を最終目的としているものである。発見されている15以上の植物ペプチドホルモンの中から、分裂組織(メリステム)の形成制御に関わるものをピックアップし、外生処理による効果が安定して現れやすい組織培養を利用した実験を中心に行った。 茎頂メリステムの形成制御に関わるCLV3をin vitroの果樹培養体に外生処理し、その反応を調査してきた。CLV3はCLEペプチドファミリーの1つであるが、そのCLV3より活性が高いといわれるCLEペプチドファミリーの1つであるCLE25も同様に処理した。しかし、前年度までの実験ではカルスからの不定芽分化などに及ぼす影響は観察されなかった。そこで本年度は、CLE25のみを用い、処理濃度をさらに高くし、すなわち昨年度までは100nM以下であった処理濃度を1μMとし、培養中のペプチドホルモンの継続的な処理の可能な発根培地への添加処理を行い、根端メリステムの変化を調査した。 カキ‘平核無’シュートを用い、発根処理時以降および根原体形成後の発根処理10日後以降にCLE25処理を行ったところ、無処理区と比較して発根率が顕著に低下することはなかったものの、10日以降の処理区において、根が細くなるという現象が観察された。この結果はCLV3が茎頂メリステムの縮小をもたらすこととの関連性を示しており、今後、反復実験を行う共に、どの組織が縮小しているのか、調査する予定である。一方、昨年度の実験でCLV3オーソログ遺伝子の存在が確認されたブドウ‘ピノ・ノワール’のシュートを使用してカキと同様の実験を行ったところ、発根率の低下は観察されなかったものの、根の成長が抑えられ、特に10日以降の処理区において、その傾向が顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
果樹の組織培養ではどの程度の濃度でペプチドホルモンが影響を及ぼすのか全くわからなかったため、無処理区と比較しながら実験を行ってきたが、昨年度は手探りの状態で、ペプチドホルモンが作用しているのかどうかわからない結果ばかりであった。しかし、本年度は処理濃度を今までの10倍量とすることで、明らかに植物ペプチドホルモンの作用と思われる現象が観察された。すなわち、発根処理10日目以降に1μMのCLE25を処理したカキの根の切片を作成し検鏡したところ、皮層+内皮にあたる細胞層の数が8→4に半減しており、皮層始原細胞が皮層と内皮を作る並層分裂が抑制された結果であると考えられた。そして、その現象は複数の果樹で確認されつつあり、ペプチドホルモンが植物に不変して存在する可能性が高いことを示唆し、今後の研究のさらなる進展が期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
CLE25が1μMという、当初考えていた濃度よりも高い濃度で作用することがわかったので、この濃度でカキやブドウだけでなく、ブルーベリーなどのシュートの発根培地に添加し、発根に関わる調査を行い、ブドウおよびブルーベリーについてもカキと同様に植物ペプチドホルモン処理後の根の切片を作成し、根の細胞の配置を詳細に観察し、カキの場合と比較検討する。そして、ゲノム解析の進んでいるブドウに関しては、根の並層分裂を正に制御しいてるCDC6のオーソログを単離し(Cruz-Ramirez et al Cell (2012) 31, 1002- 1015)、その発現を処理前と処理後で比較し果樹の根端形成分子機構を明らかにする。なお、CLV3についてはさらに高い濃度で作用することが考えられ、発根培地添加処理を行ってみる。
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