研究課題
青果物の栽培中の潜在的汚染源として、農業用水に加えて、農業用水に希釈・溶解した農薬溶液も重要であり、それらから青果物への微生物汚染の機構解明が望まれる。昨年度までに、農業用水または農薬溶液から青果物への移行菌がカキ果実(微生物叢の25%)とレタス(微生物叢の19%)で多くみられ、これらの内の移行細菌3種(Chryseobacterium indologenes、Enterobacter cloacae、Pseudomonas oryzihabitans)と移行糸状菌1種(Aureobasidium pullulans)に加えて、ヒト病原菌であるEscherichia coli O157:H7(毒素陰性菌株)も、5種類の農薬溶液中で増殖することが確認された。また、この増殖には、農薬有効成分以外の含有成分(乳化剤・展着剤)が関わっていることも示唆された。本年度は、これら農薬溶液中で増殖を示した微生物が、細胞壁分解酵素の産生を介して青果物内に侵入する機構を有しているのかどうかを確認するために、各微生物培養液において数種p-nitrophenol基質に対する酵素活性を測定した。対照菌株のペクトリチック細菌であるPectobacterium carotovorumでは、培地に添加したカキまたはレタス抽出物に対してα-L-arabinofuranosidaseやβ-D-galactopyranosidaseが高い活性を示し、カキまたはレタス中の特定の物質を認識して、これらの酵素を特異的に産生していることが示された。これに対して、上述の微生物では、数種の基質に対して低い活性は示したが、カキおよびアルカリ抽出物を添加しても顕著な活性はみられず、E. coli O157:H7を含むこれらの微生物は、細胞壁分解酵素を介して青果物内部へは侵入せずに、表面に付着しているものと推察した。
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近畿大学生物理工学部紀要
巻: 34 ページ: 27~34
Proceedings of International Symposium on Quality Management of Fruits and Vegetables for Human Health
巻: 1 ページ: 63~68