研究課題/領域番号 |
24658034
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
和田 雅人 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所 リンゴ研究領域, 上席研究員 (40241773)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 花成 / リンゴ / 台木 / 接ぎ木 / FT / TFL |
研究概要 |
1. これまで得られている早期花成と連続して花をつける性質を持つシロイヌナズナAtFT組換えリンゴ(rolCプロモーター)とMdTFL1サイレンシング組換えリンゴをそれぞれ台木にし、穂木には‘ふじ’の徒長枝を用いた。穂木長を1センチから10センチ長に変えて接ぎ木を行い、それぞれ3個体ほど活着した。穂木長による差はなく栄養成長を示したが、花成を示すものはなかった。 2.rolCプロモーターまたは35SプロモーターにイネHd3aに、35SΩプロモーターをリンゴMdFT2にそれぞれつないだ組換えリンゴの作出を行った。rolC:Hd3aを760葉片に感染し16個体の転換体を得たが本年度は花成を示さなかった。35S:Hd3aを1200葉片に感染し7個体の転換体を得たが同様に花成を示さなかった。また、35SΩMdFT2を1540葉片に感染し229個体の転換体を得た、そのうち20個体が花成を示した。 3.CPPタンパク質の核酸の細胞内への移行能力を見るために、市販のChariotをもちいて、35S::GUSベクターを混合し、複合体形成を確認した。Chariotとベクターの混合割合を決定し、リンゴ培養シュートとインキュベートし、2日から5日間後シュート組織のGUS活性の検出を行った。しかし、明確なGUSの発現は見られなかった。また、CPPの1種Tat2配列をN端に付加したAtFT組換えリンゴを作出した。35SΩ:Tat2/AtFTを760葉片に感染し、27個体の転換体を得、うち4個体が花成を示した。 4.コールドショックプロモーターにAtFTおよびMdFT2をつないだベクターを構築し、大腸菌に導入、それぞれタンパク合成を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 接ぎ木試験について、台木による花成促進効果があるかどうか、昨年度に接ぎ木した穂木の成長を観察することが可能。 2.イネHd3aに関しては、リンゴへの花成誘導効果が認められないことが分かった。リンゴで効果のあるFT分子が絞り込まれたため、各遺伝子のアミノ酸配列の比較から重要と思われる部位が類推できる可能性がある。 3.植物で効果のあるCPPすべてについて検討できてはいないが、Tat2/AtFT組換えリンゴの作出に成功し、花成を示す個体が得られた。 4.抗体作成のための大腸菌でのAtFTおよびMdFT2のタンパク発現に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1.上記に記載した今後の推進方策を実施するのに使用するリンゴの栽培管理等に必要な補助職員の雇用、本年度の残額を含めてリンゴ栽培や培養に必要な資材や分子生物科学研究に必要なプライマー合成、ベクター構築のための試薬類を購入する。 2.花成シグナルの接ぎ木伝播性を調べるために必要な大腸菌で作ったFTタンパク質の抗体の外注を行う。穂木での花成誘導が起こった場合、花成シグナルがRNAなのか、タンパク質なのかをin situ hybridization法、作成した抗FT抗体で検出する。また花成誘導が起こらない場合も同様な検出を行い、原因を究明する。 3.本年度から実施している研究成果についての発表や情報収集のための学会参加や学術雑誌への投稿に必要な経費として使用を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度使用残額65,360円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度の研究費と合わせて使用する。 1.謝金、本実験で使用するリンゴの栽培管理、増殖および培養植物の維持管理のため常勤の実験補助員を雇用する。 2.消耗品、リンゴ栽培、培養のための資材、土、肥料、農薬および培地成分、寒天、プラスチックシャーレ、培養ビン、培養ボックス、蛍光灯、培養土、液肥。また大腸菌で作ったFTタンパク質の抗体の外注を行う。更に、分子生物学研究のためのプライマー合成、ベクター構築のための試薬、シークエンス、検出キット、各種酵素。 3.研究成果の発表および情報収集のため学会に参加する。また学術雑誌に投稿するため、英文校閲料や投稿料。
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