花成促進組換え台木から穂木へ花成は伝わるか

2013 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24658034
• 研究機関: 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
• 研究代表者: 和田 雅人 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所リンゴ研究領域, 上席研究員 (40241773)
• キーワード: 花成 / リンゴ / 台木 / 接ぎ木 / FT / TFL1 / サイレンシング

研究概要

果樹リンゴでの花成シグナル伝播の試験として、rolCAtFT組換えリンゴ（維管束でシロイヌナズナFTを発現し、早期花成、四季咲き性を持つ組換え体）を台木にし、非組換えリンゴを穂木にした。この穂木長を変えて接ぎ木をした。研究機関の2年間穂木への花成誘導を観察した。穂木長にかかわらず、花成誘導は観察できなかった。芽接ぎも行ったが、研究期間内で結果が得られなかった。また、MdTFL1をサイレンシングした組換えリンゴ（早期花成、四季咲き性を持つ組換え体）を台木にし、サイレンスシグナルが非組み換え穂木に伝わるか、同様に接ぎ木試験を行ったが、2年間で穂木に花成を誘導することは出来なかった。穂木長以外にも、2股にした枝の一方を組換え体リンゴにし、もう一方の葉をすべて取り去り、シンク・ソースの流れを非組み換えの枝にしたものを作成したが、その枝でも花成誘導は起こらなかった。AtFTやMdTFL1のRNA分子を穂木で検出すること、またタンパク分子を検出することも出来なかった。以上の結果は、草本のモデル植物で提唱されている葉で光周性を感受し、そのシグナルを茎頂部に伝え花成を誘導する仕組みが、木本植物であるリンゴでは働いていない可能性を強く示唆した。また、サイレンシングシグナルが台木から穂木へ伝播しないことから、耐病性などのサイレンシングシグナルを付与した台木に非組み換え穂木を接ぎ木すればGM植物ではない産物を無農薬で栽培することなどが期待できるが、本実験では否定的な結果となった。ただし、FTシグナル伝播には維管束系での何らかの輸送体の必要性や、サイレンシングシグナルの伝播も同様な伝達系の存在も想定されるため、今後はそれらの解明および応用に研究の焦点を当てるべきだと考える。

研究成果

• [雑誌論文] Overexpression of Arabidopsis FT gene in apple leads to perpetual flowering. (2014)
  • 著者名/発表者名: Norimitsu Tanaka, Ayano Ureshino, Narumi Shigeta, Naozumi Mimida, Sadao Komori, Sae Takahashi, Yuki Tanaka-Moriya, Masato Wada
  • 雑誌名: Plant Biotechnology 巻: 31 ページ: 1-10
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effects of microspore development stage and cold pre-treatment of flower buds on embryo induction in apple (Malus × domestica Borkh.) anther culture. (2013)
  • 著者名/発表者名: Chunfen Zhang, Tatsuro Tsukuni, Miyuku Ikeda, Mamoru Sato, Hatsuhiko Okada, Yoshitaka Ohashi, Hideyuki Matsuno, Toshiya Yamamoto, Masato Wada, Nobuyuki Yoshikawa, Shogo Matsumoto, Jijun Li, Naozumi Mimida, Manabu Watanabe, Akira Suzuki, Sadao Komori
  • 雑誌名: Journal of Japanese Society for Horticulture Science 巻: 82 ページ: 114-124
  • 査読あり
• [雑誌論文] Expression and functional analysis of a novel MYB gene, MdMYB110a_JP, responsible for red flesh, not skin color in apple fruit. (2013)
  • 著者名/発表者名: Hitomi Umemura, Shungo Otagaki, Masato Wada, Satoru Kondo, Shogo Matsumoto
  • 雑誌名: Planta 巻: 238 ページ: 65-76
  • 査読あり
• [雑誌論文] Functions of the apple TFL1/FT orthologs in phase transition. (2013)
  • 著者名/発表者名: Naozumi Mimida, Sadao Komori, Akira Suzuki, Masato Wada
  • 雑誌名: Scientia Horticuturae 巻: 156 ページ: 106-112
  • 査読あり
• [雑誌論文] Application of an Analog of 9, 10-ketol-octadecadienoic acid (KODA), Affected Flower Bud Formation and MdTFL1 and MdFT1 Gene Expressions in Apple Buds under Heavy-crop and Shade Conditions. (2013)
  • 著者名/発表者名: Monrudee Kittikorn, Katsuya Okawa, Hitoshi Ohara, Satoru Kondo, Nobuhiro Kotoda, Masato Wada, Mineyuki Yokoyama, Ohji Ifuku, Ariake Murata and Naoharu Watanabe
  • 雑誌名: Journal of American Society for Horticultural Science 巻: 138 ページ: 102-107
  • 査読あり
• [学会発表] リンゴ赤果肉品種の果実のアントシアニン蓄積に光と温度が及ぼす影響 (2014)
  • 著者名/発表者名: 本多親子、岩波宏、花田俊男、守谷友紀、和田雅人
  • 学会等名: 園芸学会平成26年度春季大会
  • 発表場所: 筑波大学
  • 年月日: 20140329-20140330
• [学会発表] リンゴの単為結果果実へのジベレリン処理が果実肥大および果実品質に及ぼす影響 (2014)
  • 著者名/発表者名: 田中紀充、岸本結香、山口維尚、和田雅人、守谷友紀、荒川修
  • 学会等名: 園芸学会平成26年度春季大会
  • 発表場所: 筑波大学
  • 年月日: 20140329-20140330
• [学会発表] リンゴの結果枝の長さが果実品質に及ぼす影響の調査 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山口維尚、田中紀充、小森貞男、和田雅人、守谷友紀、太田宇則、福間萌乃、荒川修
  • 学会等名: 園芸学会平成26年度春季大会
  • 発表場所: 筑波大学
  • 年月日: 20140329-20140330
• [学会発表] 果実で発現するMdFT遺伝子の解析 (2014)
  • 著者名/発表者名: 和田雅人、田中紀充、守谷友紀、本多親子、岩波宏、花田俊男、小森貞男
  • 学会等名: 第55回日本植物生理学会年会
  • 発表場所: 富山大学
  • 年月日: 20140318-20140320
• [学会発表] 公開シンポジウムI 果実形成研究の最前線 －園芸作物ゲノム情報の実用品種への活用の現状と未来- ４ 単為結果リンゴ品種の解析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 田中紀充、和田雅人
  • 学会等名: 園芸学会平成25年度秋季大会
  • 発表場所: 岩手大学
  • 年月日: 20130920-20130922
  • 招待講演
• [学会発表] リンゴMdPI抑制リンゴの解析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 和田雅人、田中紀充、守谷(田中)友紀、花田俊男、本多親子、岩波宏、小森貞夫
  • 学会等名: 園芸学会平成25年度秋季大会
  • 発表場所: 岩手大学
  • 年月日: 20130920-20130922
• [学会発表] 予備摘果時期がリンゴ‘ファーストレディー’の早期みつ症に及ぼす影響 (2013)
  • 著者名/発表者名: 中條誉志幸、小野寺玲子、原田芳郎、佐藤光明、本多親子、岩波宏、和田雅人、高橋和博
  • 学会等名: 園芸学会平成25年度秋季大会
  • 発表場所: 岩手大学
  • 年月日: 20130920-20130922
• [学会発表] リンゴにおける早期落果性の品種間差の評価方法 (2013)
  • 著者名/発表者名: 岩波宏、守谷友紀、本多親子、花田俊男、和田雅人
  • 学会等名: 園芸学会平成25年度秋季大会
  • 発表場所: 岩手大学
  • 年月日: 20130920-20130922
• [学会発表] リンゴ‘はるか’における果実中デンプン含量と新梢葉の光合成速度の変化 (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐々木舟、渡邉学、村上政伸、佐川了、和田雅人
  • 学会等名: 園芸学会平成25年度秋季大会
  • 発表場所: 岩手大学
  • 年月日: 20130920-20130922
• [学会発表] ニホンナシ果実成熟期に発現変動するbHLH遺伝子の研究 (2013)
  • 著者名/発表者名: 滋田徳美、和田雅人、中島育子、斎藤寿広、國久美由紀、寺上伸吾、山本俊哉、西谷千佳子
  • 学会等名: 園芸学会平成25年度秋季大会
  • 発表場所: 岩手大学
  • 年月日: 20130920-20130922
• [図書] グリーンレポート JM台木を利用したりんご低樹高栽培における作業の省力効果 (2013)
  • 著者名/発表者名: 和田雅人
  • 総ページ数: 2
  • 出版者: ＪＡ 全農
• [産業財産権] リンゴの花粉取得方法 (2014)
  • 発明者名: 吉川信幸、山岸紀子、佐々木慎太郎、小森貞男、和田雅人、田中紀充
  • 権利者名: 国立大学法人岩手大学/独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: 特願2014-036645
  • 出願年月日: 2014-02-27