研究課題/領域番号 |
24658037
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 英樹 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20197164)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 内生菌 / 植物 / メタゲノム / 遺伝子 / 植物病理学 |
研究概要 |
植物の葉表面や葉組織には微生物が生息し、植物や病原微生物と相互作用することによって、植物の生育や様々な環境ストレス・病虫害に対する耐性に関わっているものと推察されている。しかし、実際の自然環境中において、どのような微生物種が生息し、植物や病原微生物とどのように関わっているのかはほとんど明らかになっていない。本研究では、申請者が考案した、植物組織から内生菌を物理的に回収する手法を用いて、植物葉の細胞間隙に生息する内生菌集団をまるごと単離し、内生菌集団を構成する微生物の多様性をまるごと解析する(メタゲノム解析)。さらに、得られたRNAからcDNAを合成し、内生菌集団中で機能している遺伝子を網羅的に解析する(メタトランスクリプトーム解析)。平成24年度は、細胞間隙液採取の条件検討と、同間隙液に含まれる微生物集団からのDNA・RNAの抽出を行い、同一のサンプルより、高純度のDNA・RNAを同時に精製する実験方法の検討を行った。その結果、(1) これまでイネを用いて確立した細胞間隙液採取法を用いて、トマトなどの葉に適用し、いずれの植物種からも安定的に細胞間隙液を採取できる方法を見出すことができた。(2) 同細胞間隙液から微生物集団をフィルター上に回収し、Water RNA/DNA Purification kit (NORGEN Biotek Corp.) を用いて、同一サンプルからまるごとDNAおよびRNAを抽出できる方法を確立した。1回の実験で、DNAは数10μg、RNAは数100μgを精製することができた。(3) 得られたDNA・RNA(RNAの場合はcDNA)を鋳型とし、rDNAの可変領域をPCR反応にて増幅することができた。したがって、今年度に確立した手法により、細胞間隙に由来する微生物集団より、DNAとRNAを同時に精製し、メタ解析に供試できると判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心であるメタゲノム解析、メタトランスクリプトーム解析の材料となる微生物集団のDNA・RNAを、ひとつのサンプルから同時に高純度で精製する手法を確立することができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した、微生物集団からの同時DNA・RNA精製法を駆使し、トマト、ササゲ、シロイヌナズナの内生菌集団にいつて、メタゲノム解析、メタトランスクリプトーム解析を実施する。さらに、内生菌の多様性および同微生物に由来するエリシター分子の同定と植物への耐病性付与について研究を行い、植物組織内に生息する微生物群集の病害抑制における役割を明らかにし、病害防除への応用についての具体的な方法を見いだす。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) トマト、ササゲ、シロイヌナズナの内生菌集団に由来するゲノムDNA・RNA(RNAの場合はcDNA)を調整し、(a)rDNAの可変領域、(b)rpoDやgylBなど微生物分類において適度の多様性を示す遺伝子を標的としたPCR増幅を行う。 (2) 得られたPCR産物を、PCR-DGGE法または次世代シークエンサーによる塩基配列決定により解析する。 (3) ゲノムDNAを用いた解析結果と、cDNAを用いた解析結果を比較する。 (4) ゲノムDNAの結果(=活性状態にある微生物集団+休止状態にある微生物集団を反映)と、cDNAの結果(=活性状態にある微生物集団のみを反映)から、内生菌集団の生息状態を考察する。
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