研究課題
セロトニン応答を視覚的にモニターできる植物体を作成するため、セロトニンに応答して発現を誘導するシロイヌナズナの遺伝子のプロモーターを単離し、その下流でルシフェラーゼを発現させるコンストラクトを作成した。セロトニンに応答する10種類のプロモーターについて、多数の形質転換体を作出し、T2世代でホモ系統を作出した。様々なセロトニンの処理条件を検討し、変異体のスクリーニングに適した処理条件を得た。さらに、個々の系統について、詳細にセロトニンに応答したルシフェラーゼ発光を解析し、その結果、セロトニンに応答してルシフェラーゼを発光する複数の系統を得ることができた。また、セロトニンを介した免疫応答を解析するために、イネのセロトニン合成酵素であるSLを過剰発現する形質転換体を作出した。DEX誘導系あるいはCaMV35Sプロモーターの制御下で、SLを発現させるコンストラクトを作成し、シロイヌナズナに導入した。さらに、得られた植物体からホモ系統を作出し、SL遺伝子が発現していることを確認した。今後、これらの植物体を用いて、セロトニンに応答した免疫応答を解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
ルシフェラーゼに応答する遺伝子のプロモーターを単離し、その制御下でルシフェラーゼを発光させる植物体を得ることに成功した。さらに、その後代から、ホモ系統を確立することができた。さらに、変異体のスクリーニングに適した様々な処理条件を決定することに成功した。また、セロトニンに応答した免疫応答を解析するため、セロトニン合成酵素遺伝子を導入したシロイヌナズナを作出することに成功した。
セロトニン応答に異常を示す変異体のスクリーニングを行うため、セロトニン応答性プロモーターの下流でルシフェラーゼを発光する植物体の中で、スクリーニングに最も適した系統を選抜し、突然変異誘発剤であるEMS(ethyl methanesulfonate)で処理を行う。EMS処理した種子から5000系統のM1世代を育成し、M2種子を得る。約200系統のM2種子をプールとして、変異体のスクリーニングを行う。播種後数週間の植物体にセロトニン処理を行い、ルシフェラーゼ発光を解析することで、セロトニン応答を調べ、セロトニンに対する応答が減少、あるいは増加した変異体を単離する。SL発現形質転換体を解析し、SLタンパク質の発現によるセロトニン量の増加を解析する。また、防御遺伝子の発現などを調べ、セロトニン量の増加により免疫応答が活性化されているかを調べる。さらに、これらの形質転換体に病原菌を感染させ、セロトニンによって誘導される抵抗性を解析する。
セロトニンに応答する遺伝子のプロモーターの制御下でルシフェラーゼを発光させる多数の植物体を作出したが、個々の遺伝子が複雑な発現制御によりコントロールされていることが明らかとなり、変異体のスクリーニングに適したラインの確立およびセロトニンの処理条件の決定に、想定より多くの時間を要した。しかし、その分、セロトニン応答遺伝子について多くの情報を得ることができた。そのため、今年度末に予定した変異原処理を次年度に行うため、その経費を繰り越した、また、それに伴って、植物の遺伝子発現の解析経費の一部およびルシフェラーゼ発光での解析経費の一部を次年度に繰り越した。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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