ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)カイコを通じて分譲を受けた九州大学保存の染色体突然変異系3統のカイコ品種に対するBAC-FISHを継続するとともに3系統のヘ転座染色体個体(正常と転座染色体の双方を持つヘテロ個体)の相互交配を行って致死となる転座染色体ホモ系統を作出した。 付着染色体の方向を明らかにしたr501系統では、末端部のBACとKAIKObaseによる配列絞り込みによって、STSプライマーの作製とPCR断片増幅まで進んだ。 パキテン期核で十字型をなす対(4価染色体対)が観察されたr52とr53系統で体細胞中期染色体に対するBAC-FISHにより、r52では第6と第7染色体、r53では第6と第20染色体の相互転座染色体とそれぞれの正常染色体が明らかとなっていたものの、転座部位の絞り込みが進んでいなかった。 r52において、候補BACを体細胞分裂中期染色体に対してFISHを繰り返すことによって、第6/7と第7/6染色体の転座染色体のうち、第6染色体由来で双方にシグナルをもたらすブリッジBACを特定した。また、同様のFISHをr53系統に対しても行い、第6/20と第20/6の相互転座染色体の双方にシグナルをもたらす第6染色体由来のブリッジBACを特定できた。それぞれは別々のBACであったが、転座点はこれらBAC内の配列に対応すると考えられ、現在PCRプライマーを設計している。 r52系統におけると第7染色体の転座部位についても同様の絞り込みを行ったところ、約800Kbまで絞り込んでいる。また、r53の第20染色体の転座点の絞り込みは1.3Mbまでとなっている。 転座染色体ホモ系統について、致死のステージを特定した。3系統いずれの胚発生もステージ25~27あたりで停止しており、この時期に関与する遺伝子の発現異常が致死の原因である可能性が示唆された。
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