研究課題/領域番号 |
24658048
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
嶋田 透 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20202111)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 油蚕 / 尿酸顆粒 / トランスポーター / BLOC複合体 |
研究概要 |
カイコ幼虫の皮膚が白色に見えるのは、真皮細胞で尿酸が結晶化して多数の顆粒を形成するからである。カイコの突然変異体には、幼虫の皮膚が白くならず透明になる系統が存在し、油蚕(あぶらこ)と総称される。油蚕形質を支配する遺伝子は数10個が知られており、その一部は細胞の小胞輸送のシステムに関与することが知られている。本研究では未解明の油蚕の原因遺伝子を解明することで動物の小胞輸送のモデルを確立することをめざす。 ヴァル斑油を支配するovおよびovpは互いに複対立形質である。連鎖解析で第20染色体の179kbの範囲に原因を絞った。ここにある1つの遺伝子Bmdysbは、ov・ovp両系統でのmRNAの発現量が正常蚕よりも顕著に少なく、油蚕形質の原因であると考えられた。Bmdysbは、哺乳動物のディスビンディンに相同なタンパク質をコードしている。 金鵄竜油と大草油は透明度が高い油蚕である。両者は独立に発見され、第5連関群4.7に占座する遺伝子okの複対立形質である。大草油と正常系統との間で戻し交雑を行い、連鎖解析を実行した結果、原因領域を700kbの範囲に絞り込んだ。最終的に、ABC(ATP-Binding Cassette)トランスポーターをコードする遺伝子"Bm-ok"が原因であることが判明した。Bm-okのmRNAの構造を調べたところ、金鵄竜油でも大草油でも異常な終止コドンを生じる変異が起きていた。一方、Bm-okのsiRNAを正常系統の初期胚に注射したところ、注射した卵から孵化した1齢幼虫の皮膚が透明になり、油蚕形質が再現された。よって、Bm-okの構造の異常がokの油蚕形質の原因であると結論した。Bm-okは、カイコ幼虫の真皮細胞に存在する尿酸トランスポーターであると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多数の油蚕変異体を用いて小胞輸送に関与する遺伝子を探索しており、早くもdysbindinの変異体を発見することができた。また、膜トランスポーターを原因とする変異体も得られたので、尿酸顆粒の形成過程の全体像を解明することができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
他にも多数の油蚕変異体を用いた連鎖解析およびトランスクリプトームに着手しており、次年度にはそれらの成果を獲得する。小胞輸送のモデルシステムとして確立できるように尿酸顆粒形成の分子機構を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
連鎖解析、トランスクリプトーム解析、生化学的解析のために消耗品費が必要であり、おもにそこへ充当する。
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