研究課題/領域番号 |
24658052
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高須 啓志 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50212006)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 寄生蜂 / 殺虫剤 / 学習 |
研究概要 |
害虫の防除には殺虫剤を利用した化学的防除と天敵生物を利用した生物的防除が最もよく利用されるが、一般に天敵昆虫類は殺虫剤の悪影響を受けやすく、殺虫剤と天敵昆虫の併用は難しいと考えられている。しかし、有力天敵である寄生蜂オオタバコガコマユバチは、砂糖水摂取時に何かの匂いを与えると、そのの匂いを学習し、その匂いを好み、その匂いを手掛かりに餌探索を行うようになる。殺虫剤を糖とともに与えると、殺虫剤の匂いに誘引されるようになり、殺虫剤を天敵昆虫の誘引剤として利用できる可能性があり、選択的殺虫剤は必ずしも天敵昆虫にマイナスではなく、蜂は圃場において殺虫剤の匂いの助けを借りて寄主や餌を効率的に探索できる可能性がある。そこで、数種の殺虫剤の匂いを学習できるかどうかと、学習できる場合その学習行動を調べた。その結果、メタミドホスはオオタバコガコマユバチには有害であり、未経験の蜂はこの匂いを避けるが、蜂蜜を摂取時にこの匂いを経験させるとこの匂いを学習し、匂いを好むようになった。また、この寄生蜂への効果が明らかではない殺虫剤トレボン(エトフェンプロックス)や除草剤ハーブニート(グリホサート)を糖と与えた場合、匂いを学習し、匂いに一時的に誘引されるものの、長時間匂いを経験させると、蜂が弱くなり、活発な探索活動を行わなくなった。実験期間中、蜂は直接これら薬剤には接触しておらず、匂いだけを経験させていることから、これら薬剤の揮発成分が寄生蜂に何らかの悪影響を与えることがわかった。さらに、3つの匂いの条件づけを(1)餌摂取時に匂いを吹き付ける、(2)餌摂取時に餌の周りの小さな穴から匂いが放出される、を行ったが、条件付けの違いで、匂いに対する反応が異なることがわかった。(1)の方法では、匂いに対して誘引されるが、(2)の方法では、匂いに誘引されず、その近くを探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的に沿って、様々な薬剤の匂いを学習できるかどうかを示し、薬剤によって蜂の行動に異常が見られたことを示した。さらに、計画段階では未知であった、条件づけにより学習行動が異なることも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、風洞と野外における殺虫剤と寄生蜂の活動との相互作用を明らかにするとともに、本年度得た結果、薬剤の揮発成分を経験するだけで寄生蜂が弱ることや、条件づけの方法の違いが学習行動に及ぼす影響について解明していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額281442円は、24年度に海外旅費(国際学会参加、ジョージア大学での打ち合わせ)として80万円計上していたものが、アメリカ昆虫学会とジョージア大学への出張を1回でおこなったため、47万円しか支出しなかったことによる。この分281442円は、25年度の海外旅費(カナダで開催の国際食昆性昆虫学会議への出席、発表)に充てる。この国際学会は天敵昆虫学研究で最も権威があるもので、本研究成果を発表するとともに最新の情報を入手することは本研究にとって重要である。25年度の予算1400千円は、計画どおり使用する。すなわち、1400千円のうち、消耗品 300千円、 旅費1000千円、人件費・謝金50千円、その他50千円である。
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