研究課題
内部寄生蜂による寄生は複数の生理現象の絶妙なバランスの上に成立すると言える。寄生蜂Asobara japonicaは、寄生の際、宿主ショウジョウバエ幼虫にまず殺虫活性を持つ毒液を、そして、その直後に解毒作用を示す側輸卵管成分を注入する。昨年度までの研究によって、宿主に対して殺虫活性を示す毒液成分は宿主の体液性免疫には影響を及ぼさないものの、宿主の血球に対して致命的な影響を示し細胞性免疫機能を破壊する可能性を示唆した。今年度はこの可能性を実質的に証明し、さらに、この毒液による宿主ショウジョウバエ幼虫の細胞性免疫への致命的影響に対して、側輸卵管成分は全く作用しないことを明らかにした。すなわち、寄生成立後の宿主幼虫体腔内では、血球の免疫作用は失われていることが示唆されたことになり、これにより、寄生蜂卵および孵化後の幼虫は血球による攻撃を免れるものと解釈できる。毒液は宿主の血球に対する致命的影響の他に、体液中のキモトリプシン様プロテアーゼ活性の上昇を誘起する。このプロテアーゼの活性化は毒液の宿主に対する殺虫活性と密接な関係があるものと予想しているが、このプロテアーゼ活性化が側輸卵管成分によって顕著に阻害されることを発見した。こうした毒液による体液プロテアーゼ活性化阻害、さらに、殺虫活性中和活性を示す成分は熱(100度,5分間)に不安定な少なくとも分子量10kDa以上のタンパク質であることを確認した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)
J. Invertebr. Pathol.
巻: 115 ページ: 26-32
10.1016/j.jip.2013.10.013
J. Insect Physiol.
巻: 60 ページ: 92-97
10.1016/j.jinsphys.2013.11.008
Applied Entomology and Zoology
巻: in press ページ: in press
10.1007/s13355-014-0261-3
J. Pesticide Sci.
10.1584/jpestics.D13-052