トランスポゾンpiggyBacを用いた、カイコの遺伝子組換え手法の改変として、piggyBac転移酵素に配列特異性を付与する試みとして以下の研究を行なった。まず、カイコで機能することが既知で、特異的DNA配列に結合すると考えられる、2種類のジンクフィンガーDNA結合ドメイン(ZF-DNA-BD)を、piggyBac転移酵素のN末端およびC末端に融合させた人工転移酵素4種の遺伝子を構築した。この際、ZF-DNA-BDとpiggyBac転移酵素との間にはフレキシブルリンカーとして、バネ状の配列(GPGGA)2配列を挿入した。これらの組換えpiggyBac転移酵素を、カイコ培養細胞BmNで発現させるための発現ベクターに組込み、組換え用トランスファーベクターとともに、BmN細胞にコ・トランスフェクションした。組換え用トランスファーベクターとしては、カイコでの実績があるベクターを用いた。トランスフェクションののち、1週間・2週間後にゲノムDNAを抽出し、インバースPCR法により挿入位置近傍の配列を増幅し、解析した。これまでのところ、組換えpiggyBacによる挿入位置の明確な違いは見いだされていない。 今回得られた結果は、ZF-DNA-BDのpiggyBac転移酵素への挿入位置についてN末端に融合させただけでは機能性を発揮させられない可能性を示唆している。今後は、両ドメイン間のスペーサーの長さや、配列についてより広く検討することなど、さらに最適化する必要があると考えられる。 特異的DNA配列を認識するpiggyBac転移酵素の構築が実現されれば、その価値は高く早期の実現を目指す。
|