研究課題/領域番号 |
24658058
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 部長 (10215923)
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研究分担者 |
佐々木 年則 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (10300930)
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 研究員 (20435712)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 長距離移動 / 日本脳炎媒介蚊 / 飛翔エネルギー / 放射光照射法 / 中性子放射化法 / 流跡線解析 |
研究概要 |
これまでに我々は,日本を含むアジアに分布するコガタアカイエカは,ミトコンドリア遺伝子の塩基配列の違いから,日本型とアジア型の2つに分類されることを報告してきた.その手法を用いて,実際に九州各地で長距離移動性昆虫調査用のジョンソントラップおよびネットトラップで捕集された蚊を判別した結果,毎年6月~8月に九州地方,特に西九州地方(調査地は壱岐市・五島市・佐賀市)で捕集されたコガタアカイエカの10%以上がアジア型であったことが明らかになった.そこで,2010年・2011年に得られた富山県・新潟県における捕集成果をもとに本種の国内移動をNOAAの気象データ,気象庁の観測データ等を用いて解析したところ,夏季のコガタアカイエカの海外からの長距離移動経路とその後の国内分散経路が予想できることが示唆された. 次に,フライトミルを用いて雌成虫を強制的に飛翔させ,日本型(千葉系統)コガタアカイエカの長距離移動性を検討した結果,最高で38時間自力で連続飛翔する個体の存在を見出し,本種が長時間飛翔可能であることが確認された.また,25°Cで飼育した雌成虫を20°C条件下で飛翔させた場合に最も長く飛翔したことから,NOAA HYSPLIT MODELを使用して後方流跡線解析を行ったところ,上空約800~1,000mに流れる下層ジェット気流で本種蚊が運ばれる可能性が強く示唆された.例えば,2009年7月11日に佐賀市で捕集されたアジア型コガタアカイエカは,その36~24時間前に中国大陸あるいは東シナ海上で発生した風に乗って運ばれてきた可能性が高いと推察された.また,コガタアカイエカの飛翔パターンはアカイエカとは異なり,長距離飛翔に適していること,さらに,長距離移動性の高い個体は,脂肪酸(特にパルミトオレイン酸)を有効に利用していることも明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フライトミルを用いた蚊の飛翔実験からその飛翔能力の物理的評価および長距離飛翔の生理的評価は概ね計画通りに実施され,成果も得られた.来年度はこれらの結果を詳細に解析し,不足の部分があれば改めて追加実験を行う予定である.しかし,飛翔前後のエネルギーの量的と質的比較は不十分である.これまでの結果を踏まえて、詳細に検討する. 当初計画した中性子放射化法による微量元素分析(日本原子力研究開発機構)と放射光照射による微量元素分析(兵庫県播磨市SPring-8)に関しては,予定通りに実施できなかった.前者は,2011年の東北大震災以降,原子炉が稼働せず未だに利用できない状況にあるためである.従って次年度以降は,代わりに来年度以降は仁科記念サイクロトロンセンター(NMCC:岩手県滝沢村)においてPIXE分析を行う計画に変更した.後者に関しては,SPring-8施設の使用に際して十分な準備ができなかったことから,来年度以降の施設利用申請と研究計画を立てるに留まった.
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今後の研究の推進方策 |
フライトミルを用いた蚊の飛翔実験からその飛翔能力の物理的評価および長距離飛翔の生理的評価は概ね計画通り実施し,一定の成果も得られており,フライトミル法による飛翔実験はH24年度まで終了する予定であった.しかし,来年度はこれらの結果をさらに解析し,不足の部分があれば改めて追加実験を行う予定である.また,供試虫のエネルギーの変化を飛翔前後で詳細に比較する.具体的には,グリコーゲンと脂肪含量および脂肪酸組成に注目する.グリコーゲン量はアンスロン法(Mokrasch, 1954)により個体別に測定する.脂肪量はBligh-Dyer(Bligh and Dyer, 1959)で測定し,TLC(薄層クロマトグラム)で展開しイアトロスキャンで解析,さらにGC(ガスクロマトグラム),およびMALDI-TOF-MSを用いて脂肪酸組成を詳細に解析する.最終的には,連続飛翔時間とエネルギー消費との相関関係を解析する. 日本原子力研究開発機構の原子炉を利用した微量元素測定は断念し,NMCC利用によるPIXE解析に変更する.H25年度は3回の測定を予定し,解析結果を考慮し,次年度の計画を立てる.放射光照射による微量元素分析(SPring-8使用)に関しては,H25年度はNMCCでの測定終了後に,可能であれば2~4回の照射を申請する予定である. H24年度に調査した富山県と新潟県の定点でのコガタアカイエカの捕集数をもとに,NOAA HYSPLIT MODELを使用して前方流跡線解析を行った結果,国内の移動経路も推定できることが示唆されたため,新たに2012年・2013年の両県での捕集結果も加えて,コガタアカイエカの国内分散を考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費の多くは,照射に伴うNMCCならびにSPring-8施設利用料,試料運搬費,生化学的測定に使用する試薬類およびサンプルチューブ・チップ等が中心である.また,現地調査で使用する捕集器具類は当研究室備品を使用するが,国内採集のための旅費および宿泊費,人件費も計上する. 消耗品費:1) NMCC使用料および測定料(代金は未定),H2425年度は3回程度の照射を予定している.2) 兵庫県播磨科学公園都市に設置された大型放射光施設(SPring-8)利用料金は1回に付き30,900円である.H25年度は少なくとも2回の照射予定を申請するため,予備費も含めて200千円を計上する.3) ディスポーザブル・ガラス器具類,生化学的試薬類と予備費も含めて合計200千円を計上する. 国内旅費:1) 岩手県滝沢村への交通費(200千円: 50千円/1名×3回), 播磨科学公園都市への交通費(200千円: 70千円/1名×2名×2回),合計を400千円を計上する.2) 野外での蚊の採集作業としてH25年の(佐賀県・長崎県)2地点を定点として採集を行う.宿泊料および日当は15千円/名,現地での移動はレンタカーを使用するため30千円(ガソリン代込み150円/Lで計算)とし,調査・研究旅費として合計200千円を計上する. 謝金およびその他費用:野外採集ならびにデータ解析のための研究補助に対して謝金1,000千円(7,800円/日として計算)を計上する.各調査地点からの蚊サンプルは我々が採集に出かけるだけでなく,各地方の研究者に依頼する場合もある.その際の通信運搬予備費として50千円,放射化測定のための輸送(宅急便)代として50千円(1,500円/回)を計上する.
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