研究課題/領域番号 |
24658067
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米山 裕 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10220774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大腸菌 / アラニン要求変異株 / サプレッサ-変異株 / 突然変異 / アラニン飢餓ストレス / ストレス誘導性突然変異 |
研究概要 |
アラニン要求性変異株をAla添加最少寒天培地上に塗布すると37℃、2日間でコロニーを形成する。この変異株をアラニンを含まない最少寒天培地で培養し、培養開始3日および4日後に出現したコロニーをL寒天培地で純化後、再度最少培地でそれらの生育を観察した結果、これらの誘導株は最初にコロニーを取得した培養時間(3日あるいは4日)より早期(2日)にコロニーを形成することから、これらはアラニン非要求性サプレッサー変異株であることが明らかとなった。このアラニン要求変異株は最少培地に添加したアラニン量に依存してその生育能を回復する。そこで、100 ug/ml~0.1 ug/mlのアラニンを添加した最少培地でアラニン要求変異株を培養し対数後期に達した培養液中に存在するアラニン非要求性サプレッサー株の出現頻度を調べるために富栄養寒天培地と最少寒天培地で生育するコロニー数を計測した結果、全菌数に対するアラニン非要求性サプレッサー株の出現頻度は、添加したアラニン量に逆比例の関係でアラニン非要求性サプレッサー変異株が出現することが明らかとなった。このことは、“アラニン飢餓”ストレスを感知した細胞が何らかのシグナル伝達系を活性化して、アラニンを供給する未知代謝系の変異を誘導したものと解釈することができる。この仮説に基づき、アラニン飢餓ストレス開始後の細胞内の遺伝情報発現の変化を調べるトランスクリプトーム解析を実施するため、培養条件の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で用いたアラニン要求性変異株は3つの主要なアラニン合成遺伝子を薬剤耐性マーカーおよびFRT配列断片を挿入することによって構築したので、最少寒天培地に塗布後出現するコロニーは、純粋な復帰変異株ではなくサプレッサー変異株と考えられる。このサプレッサー変異株の出現頻度は自然突然変異による頻度よりはるかに高いことから、アラニン飢餓ストレスによって誘導されたものと考えられ、その検証実験を平成24年度に行った。その結果、最少培地塗布後に培養経過とともに出現するアラニン非要求性変異株の数が多くなることから、本実験システムはストレス誘導性変異の評価システムとして有効であることが明らかとなった。また、異なる濃度のL-アラニンを培地に添加し培養した後に出現するサプレッサー変異株の頻度は、添加アラニン量に反比例して増加した。この、サプレッサー変異株出現の経時変化を詳細に評価したところ、培養開始30時間以降にサプレッサー変異株が出現してきた。現在本実験結果の詳細な再現性をとり、トランスクリプトーム解析を実施するための準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究において、アラニン要求性変異株をアラニンを含まない最少培地で培養することによって出現するアラニン非要求性サプレッサー株が、“アラニン飢餓”ストレスによって誘導されることが明らかとなった。このサプレッサー変異株が出現する分子メカニズムを解明することが本研究の最終的な目標であるが、平成25年度は以下の3つの視点から研究を推進する。(1)“アラニン飢餓”ストレス感知後に作動すると考えられるシグナル伝達系構成因子を同定するために、アラニン飢餓ストレス負荷前後のトータルRNAを抽出してトランスクリプトーム解析を実施し、ストレス負荷後にその発現が大きく変化する遺伝子を探索する。(2)アラニン飢餓ストレス以降に作動する因子が機能を失うことによって本サプレッサーの出現頻度は低下することが期待される。そこで、トランスポゾン挿入変異あるいはランダム変異導入法によってアラニンを含まない最少寒天培地上で生育しない変異株の取得を試みる。(3)アラニン要求性変異株はアラニン合成に関与する3つのアミノトランスフェラーゼ遺伝子がFRT断片と薬剤耐性マーカー遺伝子(GM, KM)で破壊されているため、それに由来するアラニン非要求性サプレッサー変異株は、新規のアラニン合成系の変異によって取得されたものと考えられる。そこで、これらの新規アラニン供給系の同定をショットガンクローニング法を用いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はトランスクリプトーム解析を実施する計画である。細菌のRNAは真核生物に比べはるかに不安定であることから、RNA分離操作等実験技術の習熟が必要となる。そのためトータルRNA抽出キットを多用する予定である。また、トランスポゾン挿入変異あるいはランダム変異導入法によってアラニン非要求性サプレッサー変異株の出現頻度が低下した変異株をスクリーニングするアプローチは、ネガティブセレクションに基づくレプリカ法を用いるのでスクリーニングに用いるレプリカ用プレート等消耗品を多用する必要がある。その他、本研究を遂行するために必要な情報収集あるいは成果発表のための学会参加、旅費などの経費を使用する予定である。
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