研究課題/領域番号 |
24658072
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
足立 博之 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00211699)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 微生物 / 細胞性粘菌 / 貪食作用 |
研究概要 |
本研究の目的は、真核モデル微生物である細胞性粘菌を用いて、貪食作用の分子機構および嗜好性の解明とそれに基づいて貪食作用を対象も含めて人為的にコントロールした細胞性粘菌を作出することである。まず、本年度の実施計画1である、細胞性粘菌の餌にならない大腸菌K12株の原因遺伝子の同定を行った。予備実験で見いだした寒天二員培養でクリアゾーンができない変異株について、親株へと順次遡った4株についてクリアゾーン形成能を調べ、クリアゾーンができなくなる段階で加わった変異として複数の候補遺伝子の同定に成功した。次に、実施計画2である、大腸菌の網羅的欠損変異株コレクションを用いた餌にならない変異の網羅的同定の予備実験を行った。同コレクションの親株のクリアゾーン形成能及び上記候補遺伝子のうち1つの遺伝子の欠損株のクリアゾーン形成不能を確認した上で、網羅的スクリーニングの実験方法として、96穴プレート由来の96マイクロローンの作製方法及び粘菌の微量植菌方法を確立した。なお、実施計画3の、多様な細菌株ストックを用いた餌になる細菌株の同定については、クリアゾーン形成能を持つことが報告済のKlebsiella aerogenes1株のみを入手し、形成能を確認するに留まった。上記と並行して、貪食作用に関わる細胞性粘菌側の遺伝子も1つ同定した。すなわち、細胞質分裂、貪食作用、飲作用に関わる同定済みのタンパク質D411-2pに相同性のあるCD1Bタンパク質を見いだした。さらに、その遺伝子破壊株を作製してそのクリアゾーン形成能及び細胞質分裂を調べたところ、どのどちらにも欠損を示したため、CD1Bが貪食作用と細胞質分裂に関わることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の3つの実施計画のうち、実施計画1である、細胞性粘菌の餌にならない大腸菌K12株の原因遺伝子の同定については完了した。実施計画2である、大腸菌の網羅的欠損変異株コレクションを用いた餌にならない変異の網羅的同定、及び実施計画3の、多様な細菌株ストックを用いた餌になる細菌株の同定については、年度内に実験が完了する予定だったが、予備実験が終了して菌株を手配する段階に留まった。ただし、実施計画2、3とも実験はすぐに開始できる状況であり、1から2ヶ月で完了する見込みである。この若干の遅れは、上記予備実験の待ち時間を用いて次年度に予定していた粘菌側の遺伝子同定の実験の一部を前倒しで行い、成功したことにより補完された。従って、研究はおおむね順調に進展しているといってよい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実施計画2の、大腸菌の網羅的欠損変異株コレクションを用いた餌にならない変異の網羅的同定、及び実施計画3の、多様な細菌株ストックを用いた餌になる細菌株の同定の2つの実施計画は予備実験で終了したため、その本実験を次年度の始めから行う。それと並行して、当初の計画通り、一部今年度に前倒しで実施した貪食作用の分子機構及び嗜好性に関わる細胞性粘菌遺伝子の同定及び機能解析の実験を実施し、さらに、その結果得られた知見をもとに出芽酵母を補食する細胞性粘菌を作出する実験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の実施計画2である、大腸菌の網羅的欠損変異株コレクションを用いた餌にならない変異の網羅的同定、及び実施計画3の、多様な細菌株ストックを用いた餌になる細菌株の同定の2つの実施計画の本実験が次年度に持ち越されため、その本実験である網羅的スクリーニング実験のために必要な5000以上の菌株及び大量の使い捨てプラスチック器具、培地等の消耗品の購入のための費用が持ち越された。この費用は、次年度の始めに使用し、次年度に当初予定していた費用は、当初の予定通り実験を実施することにより使用する。
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