研究課題/領域番号 |
24658076
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 幸作 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90142299)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エンドファイト / 窒素固定 / 酢酸菌 / Gluconacetobacter / レバン / リン酸 / 細胞外多糖 / ホモセリンラクトン |
研究概要 |
エンドファイティック窒素固定酢酸菌Gluconacetobacter diazotrophicus (Gdi)の生育特性(粘性を示すかどうか)と培地中のリン酸濃度ならびに窒素化合物濃度との関係をより詳細に調べた。その結果、窒素源非存在下ではリン酸濃度に拘わらず粘性を示す傾向にあり、窒素源(1.0 mM)存在下ではリン酸濃度に依存して粘性を示した。すなわち、低濃度リン酸(7.0 mM)存在下では粘性を示さず、高濃度リン酸 (25 mM ~ 50 mM)存在下で粘性を示した。当該粘性成分を酸加水分解後にHPLCで分析したところ、本粘性成分がレバン(D-フルクトフラノース残基から構成されるホモ多糖)である可能性が示された。また、本成分は培地中のリン酸濃度が増加するにつれて増大する傾向にあった。そこで、Gdiのレバン合成酵素遺伝子(lsdA)欠損株を作成し、その生育特性を調べたところ、本株は野生株が粘性を示す条件においても粘性を示さなかった。一方で、他の細胞外多糖(EPS)合成酵素(gumD)の欠損株は粘性を示した。また、LsdA欠損株がレバンを合成しないこともHPLC分析で確認した。Gdi野生株のコロニーを走査型電子顕微鏡で観察したところ、粘性を示すコロニー内にのみレバンと推測される顆粒状の物質が著量観察された。以上の結果から、GdiはEPSとしてレバンを生産し、これが粘性の実体であることが明らかになった。他方、EZ::Tn5<KAN-2>Tnpトランスポソームとエレクトロポレーション法を用いたGdiへのランダム変異導入法を確立し、粘性を示さなくなる幾つかの変異株を入手した。変異部位の特定方法も確立した。他方、ホモセリンラクトン合成酵素(gdi2836)遺伝子の欠損株は入手できなかったため、本遺伝子が必須遺伝子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目1.「窒素化合物濃度およびリン酸濃度の組み合わせとGdiの生育特性の関係の詳細の解明」に関しては、研究実績の概要欄に記載したように、粘性成分を特定し、かつランダム変異導入ならびに導入部位特定の系も確立したため、ほぼ順調に進展していると判断される。研究項目2.「リン酸誘導性EPS合成の定着性への影響の検証」に関しても、gumD遺伝子破壊株の顕著な表現型は観察されなかったものの、lsdA遺伝子が粘性物質(レバン)合成の本体であることを明らかにできたため、順調と考えられる。研究項目3.「Gdiにおけるクォーラムセンシング支配下の全遺伝子の同定」および研究項目4.「窒素化合物濃度とリン酸濃度およびクォーラムセンシングのGdiの植物定着への影響の解明」に関しては、クォーラムセンシングで重要な役割を果たすホモセリンラクトンの合成酵素遺伝子欠損株の取得に至っていない。このように、研究項目3.ならびに4.での進展に問題があるが、研究項目1.および2.において順調であるため、全体として「(2)おおむね順調に進展している」との判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目1.および2.に関しては、順調とはいえ定性的な解析結果にとどまっている。今後は定量的な解析結果を進める。また、ランダム変異導入の実験系が確立したため、ランダム変異導入ならびに変異箇所の特定などを推進し、リン酸濃度によるレバン合成系の制御ならびにリン酸濃度の感知に関わる遺伝子の同定などに注力する。研究項目3.および4.に関しては、ホモセリンラクトン合成酵素遺伝子欠損株が取得できていないため、ホモセリンラクトン分解酵素の発現によるホモセリンラクトン合成の抑制を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については、執行額内で研究目的をほぼ達することができ、それ以上の支出を必要としなかったため0円とならなかった。尚、次年度使用額分については、研究計画を円滑に遂行し、また目的以上の成果達成に向け、有効かつ合理的に使用する予定である。
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