研究課題/領域番号 |
24658077
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
喜多 恵子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70234226)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 制限酵素 / ヌクレアーゼ / 分子間相互作用 / 構造機能相関 |
研究概要 |
6塩基対のパリンドローム配列を認識する制限酵素EcoT38Iは、典型的な制限酵素とは異なり、DNA認識ドメインと切断ドメインから構成され、両ドメインがリンカーを介して結合しているユニークな構造を持つことを明らかにしている。リンカー領域の構造生物学的意義を明らかにすることを目的として、H24年度は以下の2つの項目について研究を行った。 (1)リンカー領域のアミノ酸残基を改変した変異酵素の機能解析:リンカー領域のアミノ酸残基の数が、認識特異性に与える影響を明らかにするため、12種類の変異酵素を構築して酵素活性を調べた。その結果、3アミノ酸残基を欠失させた変異酵素は活性を消失したが、16アミノ酸残基を挿入した変異酵素は野生型と同じ認識特異性を示した。 (2)DNA切断ドメインの相互作用の解析:DNA切断ドメインの機能を明らかにするために、His-tagを付加した組換え体タンパク質を精製して生化学的諸性質を解析した。その結果、DNA切断ドメインは野生型と同様に二量体を形成しているが、非特異的なヌクレアーゼ活性は示さないことを明らかにした。さらに、DNA認識ドメインと切断ドメインを等モル比になるように混合して、基質に対して大過剰量添加して反応を行った結果、野生型と同じ認識特異性を示すが、切断活性は1/100程度に低下することを見出した。 以上の結果から、本酵素が特異的な塩基配列を認識して切断するためには、「適切な」長さを持つリンカー領域を必要とすること、DNA認識ドメインとDNAの相互作用だけではなく、DNA認識ドメイン間および両ドメイン間の分子間相互作用が重要な役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書のH24年度の計画に基づき、予定していた2つの項目について変異酵素の構築と解析を行うことができた。分子間相互作用については、引き続きより一層詳細な解析を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の研究成果をもとにさまざまな変異酵素を構築して、当初の予定どおり詳細な解析を継続する。また、H24年度には予想外の分子間相互作用の存在が示唆されたので、予定していなかった新たな変異酵素を構築することが必要となる。H25年度も研究の過程で予想外の結果が得られ研究計画を変更せざるを得ない可能性があるが、その都度柔軟に対応することで、所期の目的であるユニークな制限酵素であるEcoT38Iの構造機能相関の解析ならびに人工制限酵素の創製を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は概ね計画通りに研究が進行しており、H25年度も研究計画書に記載した内容で研究を継続する予定である。ただし、H24年度に予想外の結果が得られたことから、当初予定していた研究費を全額使用することができなかった。H25年度は予定していた計画に加えて新たな変異酵素の構築と解析を行うので、当初の申請額以上の経費が必要となるが、H24年度の未使用分を充てることで、予定していた研究の遂行に支障はないと考えている。
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