研究課題/領域番号 |
24658079
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 順 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70281102)
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研究分担者 |
安藤 晃規 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10537765)
岸野 重信 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40432348)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トランス脂肪酸 / 嫌気性細菌 / 飽和化 / 反芻動物 / 酵素反応 |
研究概要 |
乳酸菌のリノール酸飽和化代謝経路において、水和脱水酵素(CLA-HY)が触媒する脱水反応により10-hydroxy-octadecanoic acid (HYB) からcis型不飽和脂肪酸のオレイン酸 (OA) とtrans型不飽和脂肪酸であるtrans-10-octadecenoic acid (t10-18:1) が生成することを見いだした。そこで、L. plantarum AKU 1009a由来の水和脱水酵素(CLA-HY)について、その諸性質を解明するとともに、本酵素反応をモデルに、生産される脂肪酸のcis/trans制御を試みた。 CLA-HY を His-tag 融合タンパク質として大量発現する形質転換大腸菌を作成した。形質転換大腸菌を、LB 培地を用いて培養し、IPTG添加により導入タンパク質の誘導を行った。得られた菌体を超音波破砕することによりcell-free-extracts (CFE)を作成し、アフィニティークロマトグラフィーにより精製を行った。精製酵素の吸収スペクトルを測定した結果、450 nm 付近に極大吸収を示したことから、本酵素はフラビン酵素であることが示唆された。また、本酵素の活性が NADH の添加により増加することが判明した。本酵素は、Δ9 位にシス型二重結合を有する炭素数 18 の脂肪酸を基質とした。また、本酵素が触媒する反応は、基質の 9 位の二重結合の水和反応であり、10 位選択的に水酸基を導入することを明らかにした。CLA-HYによるHYB変換反応をモデルに、cis/trans制御に関わる因子のスクリーニングを行った結果、大腸菌CFEの添加によりcis/trans比が変化すること、また、大腸菌CFEの添加量が多いほど、cis/trans比が大きくなることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
食品中に含まれるトランス脂肪酸には、冠動脈性心疾患のリスクを高めるなど、健康に対する悪影響が報告されてきている。トランス脂肪酸は、牛、羊、山羊などの反芻動物由来の肉や乳、その加工品に含まれており、その低減が求められている。本研究では、反芻胃に存在する嫌気性細菌におけるトランス脂肪酸生成酵素反応として、脂肪酸飽和化反応の初発反応を触媒する水和脱水酵素が、トランス脂肪酸生成に関与することをはじめて明らかにするとともに、本酵素活性の制御によりcis/trans比を操作できる可能性を示した。さらに、cis/trans制御に関わる因子のスクリーニングを行った結果、その候補となる化合物が大腸菌cell-free-extracts中に存在することを見いだし、cis/trans比の化合物添加による制御の可能性を、世界に先駆けて見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
水和脱水酵素CLA-HYの詳細な機能解析を継続し、cis/trans制御に資する情報を収集するとともに、大腸菌cell-free-extracts中に見いだした制御因子の特定を試みる。具体的には、CLA-HYの補酵素FADの酸化還元状態に影響を与えるNADH再生系の導入とその駆動による酸化還元状態の制御がCLA-HY脱水反応の幾何選択性に与える影響を評価する。また、最適化した酸化還元状態のもと、シス体選択性(OA>t10-18:1)の向上を実現する因子を選抜する。選抜した因子が、反芻動物への飼料としての投与が可能な栄養因子、ならびに、pH・温度・浸透圧などの環境因子であった場合、実際の反芻動物に対するこれらの因子の投与や環境制御を行い、反芻動物由来食品中のトランス脂肪酸含量への影響を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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