研究課題/領域番号 |
24658080
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土屋 徹 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (20362569)
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キーワード | 応用微生物 / シアノバクテリア / クロロフィルd / 光合成 |
研究概要 |
昨年度開発したトランスポゾンタギング用のベクターを利用して、Acaryochloris marinaでのトランスポゾンタギング系の開発を試みた。モデルシアノバクテリアであるSynechocystis sp. PCC 6803に対して作製したベクターを接合法により導入したところ、抗生物質に抵抗性を示すA. marinaのコロニーが得られた。得られた株を調べたところ、すべての株においてトランスポゾンがゲノムへ挿入されていた。トランスポゾンの挿入位置では、Tn5の挿入に特徴的な9塩基の重複がみられた。これらの結果より、A. marinaでのトランスポゾンタギング系が確立したとみなした。 A. marinaでの遺伝子ターゲッティング系の開発については、A. marina内では複製できない自殺ベクターをもちいて検討をおこなった。A. marinaの遺伝子と相同なDNA断片に抗生物質耐性遺伝子カセットを挿入した断片を自殺ベクターにクローニングした。得られたベクターを接合法によりA. marinaへ導入し、抗生物質で選抜したが抗生物質に抵抗性を示すコロニーは得られなかった。同様の自殺ベクターはトランスポゾンタギングで利用していることから、接合によるベクターの導入は起きていることが期待されるため、本結果はA. marina内での相同組換えの頻度が低い可能性を示唆するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、A. marinaでのトランスポゾンタギング系が確立されたという大きな進展がみられた。これは、遠赤色光をもちいて光合成をおこなうことができる生物に対して、初めて分子遺伝学的解析が可能となったことを意味する。 本成果は、申請者が開発したトランスポゾンタギング用のベクターが、開発にもちいたSynechocystis以外のシアノバクテリアにも適用可能であることを示している。 トランスポゾンタギング系の確立によって、A. marinaでの順遺伝学的解析の基盤が整った。この結果は、当初の目的であるA. marinaの分子遺伝学的解析の進展を期待させるものである。 以上の結果を鑑みて、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
目的の一つであるトランスポゾンタギングについては変異体の作出を進め、クロロフィルd含量が低下した変異体などのスクリーニングをおこなう。 また、もう一つの目的である遺伝子ターゲッティングについては、電気穿孔法の検討を進める。A. marinaへのプラスミドの導入に実績のある接合法での選抜条件を参考にして、電気穿孔法での遺伝子導入について詳細な条件検討をおこなう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に、A. marinaでのトランスポゾンタギングを開始する予定であったが、計画どおりに実験系の確立ができなかった。そのため、計画を変更しモデルシアノバクテリアであるSynechocystisでの解析をはじめにおこなうことにした。ゆえに、それ以降の計画がずれて未使用額が生じた。 次年度の研究費は、物品費を主として使用する予定である。本研究を推進する上で新たな購入が必要とされる高額機器はないので、研究費は分子生物学実験等に使用する消耗品や研究成果を発表するための旅費などに充てる予定である。
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