研究課題
核酸系うま味調味料は酵母RNAを原料として生産されるため、RNA高含有酵母の育種は産業上重要である。しかし,これまで自然界から分離したrRNA 高含量酵母が使われており育種は行われていない。それは、約150コピーあるリボソームRNA(rRNA)遺伝子のコピー数増加の方法論や、rRNA遺伝子転写の恒常性維持機構を解除して転写上昇させる方法論が無いことによる。本研究の目的は, rRNA遺伝子の転写上昇を示す変異株を分離し、その後,染色体分断技術を利用して,rDNAクラスターを倍加(約300コピーのrDNA)した株を構築することにより,RNA含量が増加した酵母を育種することである。その戦略として、rDNAの転写に必須の遺伝子を破壊し,一端rRNA含量を低下させた後,それから抑圧変異株を分離して,それに当該の野生型遺伝子を導入する方法論を開発してきた。本年度は,RRN5遺伝子に着目した。RRN5は必須遺伝子であるため、URA3マーカーを持つプラスミドにRRN5をクローン化して野生型株に導入した後、ゲノム上のRRN5を破壊した株(以下rrn5 [RRN5-URA3] 株)を作成した。その後、この株をウラシル要求株のみが生育可能な5-FOA培地で培養することでRRN5-URA3プラスミドが脱落しても生育できる抑圧変異株の分離を試み,9株を得た。そのうち4株の変異は優性で、その他の変異は劣性であること,また,sup15(劣性変異)とSUP16(優性変異)が持つ変異は単一変異であることがわかった。これらの抑圧変異株に野生型RRN5遺伝子を導入したところ,期待通り野生型株よりも高いRNA含量を示すことがわかった。RNA含量増加の機構を明らかにするため,SUP16変異を持つ株から染色体DNAを調製し,ゲノムライブラリーを作成した。今後は,このライブラリーを利用して,SUP16抑圧変異遺伝子のクローン化を試みる予定である。
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