研究課題/領域番号 |
24658085
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
片岡 道彦 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (90252494)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 微生物 / 応用微生物 / 酵素 |
研究概要 |
本研究では、炭素二重結合を持つ化合物の変換反応の探索により見出したアクリル酸水和酵素活性を持つ2種の微生物について、本水和反応の基礎的な機能解析を行い、水和・脱水反応を用いた光学活性化合物やアクリル酸の生産への基礎的な検討を行った。まず、アクリル酸のC=C結合水和酵素の単離と機能解明に先立ち、菌株の培養条件の検討を行い、最も酵素活性が高い条件の設定を行った。培地へのアクリル酸添加の有無、培養日数、反応に用いる菌体量の検討を行った。培地へのアクリル酸添加の有無および培養日数によるアクリル酸水和活性の顕著な差は見られなかった。また、生成した3-ヒドロキシプロピオン酸は反応を継続すると徐々に減少した。次に、本酵素の基質特異性を調べるために、共役二重結合を持つ数種のアクリル酸類縁体(アクリル酸のC=C結合のα位あるいはβ位の炭素原子にメチル基やハロゲンといった置換基が結合した化合物等)について同様に菌体反応を行った。今回用いたほとんどの基質に対して変換活性を有していなかったが、フマル酸を用いた場合ではフマル酸の減少とそれに伴うリンゴ酸の増加が確認された。フマル酸水和反応はTCAサイクル中の反応(フマラーゼ)であるため、この反応を触媒する酵素とアクリル酸水和反応を触媒する酵素が同一酵素であるかの検討を加えた。すなわち、種々の濃度のフマル酸を添加した反応液中で、アクリル酸水和反応に影響が出るかを確認したところ、高濃度のフマル酸添加により、アクリル酸水和活性が阻害されることが判明した。さらに、アクリル酸水和酵素活性を有する2種の微生物について、菌体反応による3-ヒドロキシプロピオン酸からのアクリル酸への変換を検討したが、アクリル酸生成は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)アクリル酸水和酵素を単離精製するための基礎的データとして、菌株の培養条件の設定を行った。これにより、高活性な菌体を得ることが可能となり、これを出発として酵素精製に取りかかることができる。(2)菌体レベルでの基質特異性を検討したところ、多くのアクリル酸類縁体には作用しなかったが、フマル酸に対して活性を持つ可能性を示すことができた。これにより、酵素精製の指標を簡便化することも期待できる。(3)菌体レベルでは、3-ヒドロキシプロピオン酸の脱水反応によるアクリル酸生成は認められなかったが、酵素精製や遺伝子取得が達成できれば、逆反応の検討が可能となると考えられる。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基にして引き続き、(1)アクリル酸のC=C結合水和酵素の単離と機能解明、(2)3-ヒドロキシプロピオン酸の脱水反応によるアクリル酸の生産、(3)アクリル酸やアクリル酸誘導体を基質とするC=C結合変換酵素の探索、に関して検討を進める。 (1)に関しては、アクリル酸およびフマル酸の水和活性を指標として酵素精製を進めていく。各種カラムクロマトグラフィーを用いて触媒タンパク質の純化を試みる。純化した酵素タンパク質を用いて、酵素化学的な諸性質の解析を行い、さらにアミノ酸配列の決定等を行い、遺伝子クローニングのための準備を進める。(2)に関しては、3-ヒドロキシプロピオン酸からのアクリル酸生産に関する検討を進めるとともに、アクリル酸水和酵素遺伝子組換え高活性菌体が得られた場合には更なる生産性の向上を目指した検討を進める。(3)に関しては、新たに見出した菌株を用いて機能解析を行い、酵素・遺伝子の単離のための検討に入る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度経費からの繰り越しが4万円弱生じたが、次年度経費と合算し、研究の効率化を図る。特に、研究推進のために、研究補助者の雇用を行う。また、積極的な研究成果の公開も進めて行く。
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