研究課題
挑戦的萌芽研究
多糖の合成に関与するポリアミン合成系の探索 多糖生合成酵素の発現制御に関与すると考えられている2つの異なるアルギニン脱炭酸酵素によるポリアミン生成が関与している可能性を検討した。Synechocystis PCC 6803の有する2つのアルギニン脱炭酸酵素ADC1, ADC2の誘導に関して、ADC1、ADC2プロモーターの下流にlacZを連結し、LacZ活性を測定することにより発現誘導パターンを解析することを目標として、本遺伝子の構築と遺伝子の染色体への導入を行った。また、ポリアミンセンサー(PotD)破壊株の作成を行った。薬剤耐性遺伝子をPotD遺伝子中に導入して、Synechocystis PCC 6803の染色体の本遺伝子の不活化を行った。細胞外糖生産を制御する二成分系の同定(浸透圧制御系の関与の検討) バイオフィルム形成は塩ストレスによって誘導されることから、二成分系の関与が強く示唆される。Synechocystis PCC6803の47個のヒスチジンキナーゼ破壊株ライブラリー株の塩ストレスによるバイオフィルム形成能をクリスタルバイオレット法によって検討した。マイクロタイタープレートでバイオフィルム形成度合いを評価して、一次スクリーニングとして結果を得た。マイクロタイタープレートにおいては、プレートの乾燥を防ぐ必要があったことから、培養に用いる容器のシール法や96穴の中における培養液の配置などに関して、最適化を行った。次に、高生産変異株について詳細なバイオフィルム形成度合いの評価を始めている。
2: おおむね順調に進展している
増殖フェーズから生産フェーズへの切り替えを担う因子の同定が進められており、その候補となる因子の存在が見いだされつつある。一方、菌の不安定性とフリーザーの不調の両面が重なり、変異株の作成に時間がかかっている菌があるため、引き続きその菌の作成と多糖生産の評価をすすめる。環境ストレスに適応機構の一端の解析であることを予測していたが、研究の進展に伴い、増殖の抑制と多糖生産の転換が明らかになりつつあり、本研究の結果は細胞自体の代謝変換系の機構の一端の解明に貢献することが期待される。本研究を計画通り進めていくことが今回明らかになったと考えられる。
Synechocystis PCC 6803のポリアミン合成系はアルギニンを起点とする経路があることはわかりつつある。一方、動物細胞のようなオルニチンやリジンなどを起点する経路の有無を確認して、ポリアミン合成系酵素のうち多糖分泌に関与する酵素遺伝子の同定をすすめる。また、今年度に作成したADC1とADC2の遺伝子発現を調べるlacZ発現株を用いて塩ストレスとポリアミン合成、および多糖合成との関与を明らかにする。ポリアミンセンサーと考えられるPotDの不活性化変異株を用いて、ポリアミンの情報伝達機構の解析をすすめる。クオラムセンシング機構に関与すると考えられるポリアミンの意義の解析においては、PotDを対象にして検討する。また、細胞増殖フェーズから多糖生産フェーズへの変換に係わる可能性があるPotDの発現と機能を、ポリアミンの合成と多糖合成を測定して検討を行う。ラン藻の生産する多糖の分析に関しても、酸分解や熱水抽出を用いて検討を進めていく。抽出法の違いによって、多糖の回収量の差異や成分の差異が生ずることがあることから、抽出法と抽出される物質の成分の評価を行う。得られた多糖成分の結合に関しては酵素を使った結合様式のクラス分けをはかり、セルロースとは異なる結合様式の多糖成分の評価をすすめる。
Synechocystis PCC 6803の染色体として複数体約10個を有することから、null変異株の獲得までに時間を有する。また、致死的遺伝においてはknockdown変異株の取得をめざすこととなるが、PCR等による評価必要であり、knockout もしくはknockdownの見極めは難しい場合がある。次年度使用額は、当初計画していた多種類の遺伝子不活株を作成中であったが、菌の不安定性とフリーザーの不調の両面が重なり、変異株の作成に時間がかかっている菌があるため、引き続きその菌の作成と多糖生産の評価をすすめるとともに、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。計画に変更はなく、以下の消耗品を中心とする:オリゴDNAや遺伝子操作用の試薬、プラスミド作成や培養に必要となる試薬を必要とする。また、本実験補助による研究の進展を図る。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
J. Bacteriol.
巻: 194 ページ: 6828-6836
10.1074/jbc.M111.236380