研究課題/領域番号 |
24658092
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
海老原 章郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60415099)
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キーワード | レニン・アンジオテンシン系 / 血圧調節 / レニン / プロレニン / プロ酵素 / 酵素化学 |
研究概要 |
本研究の目的は、プロ酵素に備わる不活性化機構を酵素化学および構造生物学の手法によって解明し、新しい創薬への応用性を探ることである。研究対象は、血圧調節酵素レニンと基質タンパク質アンジオテンシノーゲンである。これまでに、低分解能(4.4Å)にて酵素・基質複合体の結晶構造が決定されている。本研究では、反応機構の理解に必要な分解能(2Å)にて複合体の結晶構造を決定することを目標に、複合体形成後、分子間に共有結合を導入し強固な複合体を作ることで分解能を向上するアイデアを考えた。その実現のため、光架橋(光照射による共有結合形成)が可能な非天然アミノ酸を部位特異的に導入したタンパク質を生産するため、ネイティブ型の組換え型プロレニンとアンジオテンシノーゲンの生産系を構築してきた。生産系には、非天然アミノ酸導入が可能で、かつ迅速に大量培養ができる大腸菌発現系を選択した。 昨年度、活性を示す可溶性の組換え型酵素画分が存在する条件を見いだしたが、存在量はごく少なく、単離精製することができなかった。今年度は、可溶化促進タグタンパク質と融合した酵素プロレニンを設計し、プロレニン内に存在するジスルフィド結合の形成を促進可能な大腸菌宿主を選び、発現条件を検討した。その結果、タグに対するアフィニティ精製の結合画分が酵素活性を示すことが分かった。酵素レニンおよびプロレニンを動物細胞や昆虫細胞で生産する系は確立されているが、大腸菌を用いた生産系は20年来の試行錯誤にもかかわらず未だ確立されていない。今回の生産法は、結晶構造解析に必要な大量のタンパク質生産の突破口になると考えられる。一方、基質アンジオテンシノーゲンの生産については、今年度、精製法を改良し精製収率を1.6倍に向上することができた。さらに今年度、大腸菌培養リアクターを開発し、従来法と比べ培地体積あたり5倍の集菌量を実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度の目標は、非天然アミノ酸を部位特異的に導入したタンパク質とネイティブ型タンパク質を生産し、調製した光架橋複合体を結晶化することである。現時点で、組換え型アンジオテンシノーゲンの精製収率を向上しmgオーダーで精製標品が得られ、酵素活性を示す組換え型プロレニンを得る発現条件を見いだすことができた。これらの2つの結果は、光架橋可能な非天然アミノ酸を導入したタンパク質を得る上で必要不可欠な成果である。しかし、光架橋複合体の取得には至っていない。よって、現在までの達成度は遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌を用いて非天然アミノ酸を部位特異的に導入したタンパク質とネイティブ型タンパク質を調製し、光架橋による酵素・基質複合体の安定化を行う。その後、結晶化とX線回折データを取得する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、非天然アミノ酸アジドチロシンを導入したタンパク質を調製する計画であった。しかし、タンパク質生産系の構築が遅れたため、現時点でアジドチロシン導入実験は未着手である。非天然アミノ酸アジドチロシンは高額であるので、その費用が支出されなかった事が次年度使用額が生じた理由である。 今年度構築した大腸菌培養リアクターにより、大腸菌培養の高密度培養が可能である。この装置を用いれば、使用する培地の液量を節約できるので、高額な化合物であるアジドチロシンを培地に添加した実験を実施できると考える。よって次年度は、アジドチロシン導入タンパク質の調製を行う。
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